第7話 屋敷の中で3
エ「貴女にレーヴェを幸せ、もとい、“結婚”してもらいたいの♪」
ぼんやりとランプが照らす部屋で、一人の絶世の美女、女神エルメスが答えた
その答えに、部屋の中の四人。
「・・・ついに、ボケたのか。・・・そうだよな、何百年と生きてるら・・・」
一人は、異世界より来た、先王レオンハルトの魂を持つシン・シラトリ
ミ「え、そ、そんな。け、け、結婚だなんて///」
一人顔を赤める部屋の主で公爵の孫娘ミリアニス・ヴァンダール
ミュ「へ、陛下とミリアニスが!・・・これは、・・・祝いじゃ!」
一人は屋敷の主である3大公爵が一人、ミュラー・ヴァンダール
マ「だ、旦那様!しっかりしてください!!というより、陛下はいません!!」
一人は、屋敷の侍女長のマリー
この部屋は一種のカオスになっていた。
エ「あら、何か私、可笑しな事言いました?」
エルメスは首を傾げた
「ああ、言ったよ!何だよ結婚って!!つかなんだよ幸せって!俺は不幸になるのか!!」
ミ「そうです!だいたいお互い初対面ですし///まずはお互いの事をですね///そのですね///できれば、お母様みたいに恋愛で、そして子供は男の子と女の子が一人ずつで・・・」
ミリアニスはパニック状態
エ「あら、もしかしてまんざらでもない。」
ミ「ハゥゥゥ~~~////」
エルメスの言葉でミリアニスが真っ赤になる。
「煽ってんじゃねぇよ!!姫さんも確りしろ。」
シンは、真っ赤になったミリアニスの手を掴む
ミ「あっ!・・・///あの、最初は優しくしてください////」
ミリアニスは潤んだ瞳でシンを見つめた
その仕草にシンはドキッと来たが
「戻ってこい!“ベシッ”」
ミリアニスの額にデコピンをかました。
ミ「ッ~~」
とミリアニスは額を押さえた
「そこの二人も帰ってこいや!!“ベシッ”“ベシッ”」
ミュ・マ「「ッ~~」」
三人「「「申し訳ない(ありません)(ございません)。」」」
「・・・では、話に戻るぞ。」
何とか三人を正気に戻し話を戻すシンだが
ミ「あの~、恐れながらエルメス様。」
ミリアニスが恐る恐るエルメスに質問する
エ「何かしら。」
ミ「先ほど言った“レーヴェ”とはシラトリ様の事なのですか?後、おじい様が、“陛下”って言っていましたが・・・」
シ・ミュ「「!?」」
ミリアニスの言葉に肩を震わす二人
エ「ええ、そうよ。レーヴェ、先王陛下であるレオンハルトの愛称ね。で、その先王陛下の魂を持っているのが此処にいる、シン・シラトリね。私が“連れて来た”の♪」
ミ「連れて来た?・・・つまり、シラトリ様は、崩御されたレオンハルト様なのですか。」
エ「ええ。ちゃんと生前の記憶もあるし正真正銘の先王陛下よ。」
ミ・マ「「・・・え、エェェェ~~~!?」」
二人の女性の声が部屋に響いた
そして、案の定、混乱する二人をシンはデコピンで正気に戻した。
「さて、このボケ女神、さっさと説明しろや。ああ、連れて来たって意味もな。」
エ「もう~しょうがないわね~。いいわ、説明してあげる。簡単に言うとね。頑張った貴方へのご褒美なのよ。」
「は?ご褒美?」
エ「そっ、ご褒美。だって、貴方ったら即位してから帝国とか内政にかかりっきりで女性とかに無縁だったじゃない。まぁ、それらが終わったら結婚するんだろうなぁ~って私達神と契約獣たちは思ってた訳よ。」
「ああ。」
エ「でも、貴方はあの戦いで命を落としたわけじゃない。それは、いくら何でも可哀そう・・・いえ、余りにも理不尽に思えてね。で、貴方の魂が消滅する前に異世界に飛ばして、時が来たら再びこのリベールに戻って来て自由に生きてほしいと思ったわけよ。」
「成程な、理解はした。が、戦いで命を落とすのはしょうがないじゃないのか。それは、死者に対する冒涜だろ。女神がそれをやって良いわけがない。」
エ「ええ。その通りよ。でもね、私は許せなかったの。・・・自分の事よりも周りを優先してきた貴方が、幸せになれないまま死んでしまうのが。嫌だったの。“ジワ”」
そう話すエルメスの眼が潤んだ
「え。」
エ「貴方は幸せになる権利があるの、幸せになっていいの!」
「おい、エルメス?」
エ「私は、貴方の傍で貴方が幸せになるところが見たかっただけなの!」
「え、え、ちょっと落ち着こうか、セルメスさん?」
エ「それで、レーヴェがリベールに戻って来た時に、すぐ相手が見つかるように私の一部を彼女の魂に隠して保護していたのよ!体が弱かったのは、彼女に変な虫がつかないようにしていたのよ。病弱だと男は興味がなくなるじゃない?確かに、本人や周りを心配させたのは謝るわ。レーヴェが戻って来たら私は彼女の身体からいなくなるつもりだったし、彼女の身体も元気になるわ。そ、それでね///二人が結婚して子供が生まれたら、私が抱っこして、あやして、一緒にお昼寝して「いい加減、目へ覚ませ!!」うぎゃっ!?」
話が変になりそうなので魔力を纏った手とうでエルメスを黙らせた。
エ「ごめんなさい。私、どうかしてたわ。」
「連れて来た意味と、結婚の意味はよく分かった。・・・まぁ、オレの為にしてくれたのは感謝するが、流石に今回は度が過ぎるだろう。」
エ「ごめんなさい。」
「俺じゃなくて、姫様たちに謝れ。」
エ「ごめんなさい、公爵。貴方の一族に変なことして。」
ミュ「いえ、そんな、恐れ多い。」
エ「ごめんなさいね。ミリアニス、貴女の人生を狂わせてしまって。」
ミ「そんな恐れ多いです!私なんかを選んでもらってきょ、恐縮です。」
エ「ごめんなさい、マリー。貴女にも不安を与えてしまったわ。」
マ「そ、そんな女神様!女神様に選ばれたお嬢様にお仕えすることが出来て光栄です!!」
どうやら、三人はエルメスの所業を許したようだ。
エ「でもね、ミリアニス。貴女が良ければなんだけど、レーヴェと結婚してあげて。コレは私の本心。多分、また彼は無茶をするし周りを優先してしまうだろうから、結婚が無理でも彼の・・・シンの安らぎの場所になってくれないかしら?」
ミ「え、そんな///」
エルメスの言葉に再び赤くなるミリアニス
「おい、エルメス。」
シンがエルメスを咎めるが
ミ「わ、私に出来るでしょうか?シラトリ様の心を癒すことが。」
続くミリアニスの言葉に皆が驚く
「!?」
ミュ「ミリアニス、お前!?」
マ「お嬢様!?」
ミリアニスは真っ直ぐにエルメスを見つめる
エ「ええ。貴女なら大丈夫、私が選んだ娘だもの。シンをお願いね。私とは暫く会えないと思うけどまた会いましょうね、ミリアニス。」
ミ「はい!エルメス様!」
エ「じゃあね、シン。私は消えるけど、この娘を泣かせないでよ。泣かせたら許さないんだから。」
「~~~っ。分かった、分かった。泣かせたりしないから、天界に戻れ。」
さっさと戻れと手を振るうシン
エ「ええ、戻るわよ。それと、さっきも言ったけど召喚契約はまだ続いてるか、私は有事の際だけど他の召喚獣は大丈夫よ。」
「そうかい、ありがとよ。あまり、お前の力を使うことが無いように祈るよ。」
エ「そうね。じゃ、また会いましょう。貴方たちに女神の祝福がありますように。・・・じゃぁね~♪」
そういうとエルメスの身体が強く光り、四人は目を閉じた。
光が収まるとそこには何もなかった。
四人は黙っていたが
ミ「あの、シラトリ様。」
ミリアニスがシンに話しかけた
ミ「いきなり結婚は無理ですが、最初はお互いを知るために///その///恋人から、お願いします///」
その言葉にシンは
「・・・(友人ではなく恋人からか・・・この娘は天然か?・・・そこは、指摘しない方が良いかな。)」
ミ「あの、私じゃダメですか?」
「・・・後悔はしないか。」
ミ「っ!はい!末永くよろしくお願いします!」
そして、またしても
「(やっぱこの娘は天然というか世の中の常識がないのだろか。)」
と思うシンであった。