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第5話 屋敷の中で1

 無事にミュラー公爵が治める街に入り、シュウバルツ率いる護衛の騎士たちとも別れ馬車は、公爵家へと向かっていた。

 襲撃してきた賊たちは、シュウバルツ達に引き渡し、リベールの国境付近にあるハーケン門の牢に監禁することになった。

 

 一方で馬車の中で夕暮れの街並みを窓越しからシンは静かに見つめていた。

 その眼差しは、優しく何処か嬉しそうだ。

 その眼が気になり公爵が声を掛ける。

 ミュ「シン殿、どうかしましたか?何か私の街にありましたか。」

 その声に、シンは、公爵に向き直り嬉しそうに答える。

 「いや何、民達が笑っているのが嬉しくてな、俺達が・・・いや、公爵たちが頑張ってきたものを見るのが嬉しくてな。」

 そして再び、窓から街並みを見て目を細めるシン。

 それに合わせ、公爵も窓から街並みを見る。

 確かにシンの云うとおり、自分が治める民達が笑っていた。

 男たちは酒場で酒を、親子なのか母親と子供が手を繋ぎ買い物を、また子供同士でおいかっけこしている。流れる景色の中、どの人も笑っておりミュウラーも顔を和ませた。


 そして、馬車は公爵家へと到着した。

 公爵家の門を通り玄関前に馬車を停め御者が馬車の扉を開ける

 男「旦那様、シン様。到着いたしました。」

 御者を勤める使用人が2人が降りたのを確認し、屋敷の玄関に向かいその扉を開くとそこには、

       「「「「お帰りなさいませ。旦那様。」」」」 

 と、使用人一同が出迎えていた。

 その出迎えを公爵は片手を挙げて答える

 ミュ「おお、皆も出迎えご苦労。さぁ、皆も自分の作業に戻って構わんぞ。ああ、セバスとマリー。すまんが、客人を泊める部屋を頼む。シン殿、紹介しよう。この者はセバス。当家の侍従長を勤めております。そして、こちらがマリー、当家の侍女長を任せています。二人ともこちらは、シン・シラトリ殿だ。」

 公爵から紹介された二人は、客人であるシンに頭を下げた。

 セ「ようこそ、いらっしゃいました。シラトリ様」 

 セバスは、歳は50代ぐらいで髪と口髭がグレーな紳士である。

 マ「どうぞ、ゆっくりお過ごしくださいませ。」

 マリーも歳は50代ぐらいだろうが、ふくよかで優しそうな女性である。

 二人から感じるのは敵意ではなく、歓迎の雰囲気を感じるので、シンは安心した。

 「ミュウラー様より紹介されました。シン・シラトリです。身分は平民なのでそんなに、固くならずにお願いします。今宵はお世話になります。」

シンが頭を下げる。

 公爵と二人の時は砕けた口調だがこういう時は、ちゃんとするシン。

 ミュ「シン殿は、私の命の恩人でな、暫く当家で生活してもらうことにしたから。そのつもりで、頼むぞ。」

 ミュウラーの説明に二人は快く返事を返す。

 この事は、二人が馬車の中で決めたことでる。もちろん、シンの生活基盤が出来たら、屋敷を出ていくという約束だが、公爵はずっと居て良いとも思っている。

 公爵は何処までもシン優先である。

 ミュ「では、マリー。シン殿を客間にお連れしてくれ。」

 公爵はシンの案内を侍女長のマリーに任せ、セバスと共に自室へと戻っていった。

 マ「では、シラトリ様、参りましょう。」

 “こちらです”とシンはマリーに客間へと続く廊下を歩き出した。

 

 マ「失礼ながら、シラトリ様と旦那様はどういう関係なのでしょうか?」

と、歩きながらマリーは聞いてきた 

 「(まぁ、警戒はするよな。)マリーさん。様は付けなくて結構です。

 公爵様との関係は・・・命を助けた、助けられた。の、関係ですが。」

 マ「そうでしょうか?確かに旦那様は、身分に関係なく接してくれますが、今日あった人にあそこまでの好意は少々度が過ぎると思うのですが。それに、旦那様とシラトリ様は、以前からの知り合い様に感じられますが。」

 「(なかなか、鋭い女性だな。)・・・そう思うのなら、直接、公爵様にお訊ねしたらどうですか。後、様付けは決定なのですね。」

 マ「旦那様に、害が及ばないなら私どもは無用な詮索は致しません。ただ、旦那様のあのように嬉しそうなのは久しぶりなので。此方としては戸惑っているのです。後様付は致し方ありませ。どのような方でも、旦那様のお客様ですから。」

 「左様ですか。・・・(これは、早急に公爵と対策を考えねば、あらぬ誤解が・・・。)」

 シンは今後の対策を考えていた。

 

 シンが思考している中、前を歩くマリーが止まるとシンも止まった。

 マ「着きました。此方が客間になります。夕食の準備とシラトリ様の客室の準備が整うまで此方でおくつろぎ下さいませ。後程、別の侍女を迎えに来させますので。では。(ペコ)」

 マリーはお辞儀をしてその場を後にした。他の侍女に指示を出しに行ったのだろう。

 シンは客間に入り、部屋のソファーへと腰を下ろした。

 「さて、これからどうするか。とりあえず、当分の生活拠点が出来たわけだが。後は、何かしら職に就いて屋敷から出ないと、何時までも此処にいる訳にもいかないし。まぁ、それは追々考えるとして。・・・そういえば、この世界に来たわけだが俺の体はどうなってるんだ?生前は、魔力があったが、今はどうなんだ。流石に日本に居た時は感じなかったが。・・・試にやってみるか。(スッ)」 

 そういうと、シンは片手を前に出しその手中に火をイメージする。

すると、

 「“ボッ”おお!まさか、ホントに出来るとは思わなかったな。なるほど、此方に戻ってきて何かしらの覚醒・変化が起こったのか。まさに、あっちで呼んだ小説の世界だな。」

 シンはそれからも試してみようとしたが。

“コンコン”

 「ん?誰だ。(迎えでも来たのか?)」

 ?「し、失礼します。おきゃ・・・シラトリ様!おお、お茶を、お持ちし、しました。」

 どうやら、迎えではなく客人のお茶が運ばれてきたようだ。

 声からしてまだ、まだ若い少女のようだ。

 「(随分と若いな、見習いだろうか?)ああ、入ってかまは無いぞ。」

 扉の向こうのいる少女とおもしき娘に指示を出す。

 少女「し、失礼します!」

 シンが少女と思う娘は、何処かおどおどしながら客間に入って来た。

 入って来たのは、シンが想った通りの少女で年齢10歳ぐらいだろうか、髪は肩まで届く栗色で瞳は薄いグリーンで可愛らしい容姿の小柄な娘であった。その容姿にシンは何処か懐かしさを感じた。

 少女「私、公爵様にお仕えしてる、侍女見習いのエ、エレナ!と申します!え、えっと、準備が出来るまで、私がシラトリ様の、お、お相手(話し相手)をさせていただきます!よろしくおねがいします!」

 「ん?ああ、シン・シラトリだ。此方こそよろしく。(何処かで見たような・・・気のせいか?)」

 エ「はい!では、お茶をご用意しますね!」

 シンが考えていると、その娘はお茶の用意を始めた。

 「ん~~。(あの髪と瞳の色何処かで・・・)」


 エ「ど、どうぞ。」 

 「ああ、ありがとう。」

 エレナが見つめる中シンは一口啜り

 「おお!コレは上手いな。その歳でコレだけの味を出せるんだ。大したものだ。誰に淹れ方を習ったんだ。(この味・・・もしや)」

 お茶を褒められ安堵するエレナ 

 エ「え、えっと母に教わりました。母は、お城で働いていますので。」

 「そうか、母親からか・・・もしかして名前は、レーナだったりする?」

 シンは、もしかしたらと思いエレナの母の名を聴いた。

 エレナは驚いて眼を見開いた

 エ「ど、どうして母の名前を知っているんですか!?」

 「ん。昔、レーナのお茶を飲んだことがあってな。その時の味と一緒だったからもしかしてと思ってな。(そうか、レーナの娘か・・・)」

 エ「そ、そうだったんですか。母と同じ味が出せて嬉しいです。」

 母と同じと言われ嬉しそうに笑うエレナ

 「レーナは元気か?」

 エ「はい!私は住み込みで働いていますが、手紙のやり取りをしていますので、元気で働いているみたいです。」

 「そうか。寂しくないのか?」

 エ「月に何度か実家には帰ることが出来ますから。それに、旦那さまや他の先輩侍女さん、あと“お嬢様“もいらっしゃいますので寂しくなんかありません!」

 「そうか。偉いな。エレナは“ナデナデ”」

 エ「えへへ。何だかお兄ちゃんが出来たみたいです。」

 エレナは撫でられながら嬉しそうに言う

 「お兄ちゃんか。」

 エ「あっ!すみません旦那様のお客様にご無礼を!」

 エレナは慌てて頭を下げる

 「構わないよ、エレナ。俺は貴族じゃなく平民だから、好きなように呼びな。」

 エ「はい!実は私、お兄ちゃんがいたらいいなぁ~って思ってたんです。」

 「そうか。まぁ、暫くはこの屋敷に住むからよろしく。その呼び方は二人の時の方がいいな。他の人に怒られるからな。」

 エ「はい!」

 

 シンとエレナが話をしていると“コンコン”

 客間の扉が叩かれた。

 先輩侍女「失礼します。夕食の準備が整いましたのでご案内いたします。どうぞ、此方に。」

 「ああ、ありがとう。じゃあなエレナ。お茶、美味しかったぞ。」

 シンは一言エレナに告げ客間を出て侍女の後について行った。

 エレナは頭を下げて出ていくシンを見送った。

 

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