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第3話 森の中で3

 森の中で二人の男が適当な巨木に座り何かを話している。

 一人は貴族のミュラー・ヴァンダール、三大公爵の一人で政治にも強い影響力を持つ大貴族である。

 もう一方は、シャツにジーパンとラフな格好で歳は20歳ぐらい、整った顔立ちに長身な体躯、白銀の長髪を後ろで一まとめにし、灰青はいあおの瞳を持つ青年、白鳥 信である。

 彼は前世の記憶・・・かつて自分がリベールの王として過ごした記憶を持っている。

 

 「・・・なるほど。俺が死んで20年が経つのか・・・。」

 ミュ「はい、陛下が亡くなられて20年、その間の帝国との戦はありません。」

 「そうか・・・ハルバール王国と帝国の関係はどうなった。」

 ミュ「はい。ハルバール王国とは変わらず友好な関係が続いています。帝国に関しましては、条約は結んではいますが気を許せる関係にはなっていません。」

 「だろうな、あの強国が簡単に諦めるはずがない。ハルバールに関してはガゼル王に感謝だな。」

 ミュ「はい。ハルバールの方でも我がリベールとの関係は重要ですから。」

 「確かに、それで弟はガゼル王とうまくやっているのか?国同士の仲が良くても王同士もよい関係でなければならない。」

 ミュ「はい。現国王・ケビン・リベール陛下もガゼル王との関係は良好です。先月もハルバールで戦後20年を記念した祝典に出席し友好を深めていたと聞いています。さらに、ガゼル王が二か月後に行われる我が国の武闘大会を拝見すると聞いています。」

 「・・・武闘大会?そんなのリベールにあったか?」

 信が腕を組んで生前の記憶を思い出す。

ミュ「はい、レオンハルト陛下がご存命の頃はありませんでした。この大会はレオンハルト陛下が崩御された翌年から開催されました。」

 「何のために?」

 信はさらに考える

 ミュ「レオンハルト陛下は戦場で数多くの敵を倒し、このリベールを護ってこられました。その剣技は剣聖と今でも称えられております。武闘大会は陛下の武と平和を導いた栄誉を称えるための催しなのです。」

 「なるほど。しかし、そこまでしなくてもよかっただろう。俺はそこまで称えるようなことはしていないぞ。」

 信が謙遜するが・・・

 ミュ「何を申しますか!陛下が戦場で上げた功績は素晴らしいモノです!帝国との、ある戦場では、お一人で帝国師団の一隊を全滅させ。またある戦場では、味方のハルバールの兵を助けるために少数精鋭で敵地に乗り込んで見事に救い出し。またある戦場では、絶体絶命の状態を逆転させ帝国を撤退させた。その戦略と武功は称えられて当然なのです!!まして陛下は戦場でだけでなく民たちを想っての政治をしてまいりました。なので、陛下は歴代リベール王の中でまさに賢王と称えられ今でも民達や貴族たちから英雄と称えられているのです!!」

 「そっ・・・そうか・・・はは・・・」

 熱く語る公爵に信は若干ひいた。

 

 ミュ「そうなのです!!・・・まぁ・・・確かに当時を振り返れば陛下は無茶ばかりされて・・・我々臣下の心臓をコレでもかと苛められましたが・・・その経験もあったか今では多少のことでは驚きませんが。」

 「そうか・・・まぁ、俺も若かったし若気の至りだ・・・その・・・すまん・・・」

 信は申し訳なさそうに頭を下げる

 ミュ「構いませんよ。今のケビン陛下はレオンハルト陛下より我々臣下を労わる方です。」

 その言葉が信の胸に刺さる

 「・・・だろうな、あいつは昔から優しかったからな。・・・その様子では今のリベールの状況は安泰か?貴族同士の勢力争いを除けばだが。」

 信が傍の木に縛られている賊たちを見る

 「全く、あの粛清から何を学んだんだろうな、貴族どもは・・・平和になったから権力が欲しくなったのか?・・・ならその考えは改めてもらわねばならない・・・」

 ミュ「賊の件に関しましては我が公爵家が責任をもって賊たちの黒幕を吐かせます。」

 「頼むぞ。だが、公爵暗殺を考える奴だ。そう簡単には尻尾を掴ませないだろうな、何より・・・此奴らの背後に居るのはリベールの貴族ではなく帝国に関わりのある者かもしれない。」

 ミュ「!?・・・それでは再び帝国が・・・」

 公爵の顔が強張る

 「あくまでも可能性の話だ。・・・だが、警戒は怠るな、ケビンにも伝えておいてくれ。」

 ミュ「はっ!」

 公爵が再び臣下の礼をとる


 「それでミュラー殿。」

 ミュ「はい。」

 「これからどうする?見たところ何かの帰り掛けに襲撃されたようだが護衛の者たちは全滅したのか?」

 ミュ「分かりません。陛下に定期報告の帰りに街道で襲撃を受け、護衛の者たちの何人かは私の護衛でいたのいたのですが、最初の襲撃してきた賊の他にも森の中に潜んでいたので、その者たちから逃れるために騎士たちが逃がしてくれたのですが、どうやら賊はまだいたらしく陛下の助けがなかったら今頃私はいないでしょう。・・・やはり私も老いました。昔なら私も騎士たちと共に剣を振るい賊どもを蹴散らしたというのに・・・。」

 「人が歳を取るのは自然なことだ、嘆くことはない。それに、騎士の務めは貴族・主を護ること。そして、貴族・主は領民と臣下の日々の生活を守ることだ。貴方は貴方のできることをすればよい。」

 信は公爵の肩を叩いた

 ミュ「・・・はい。ありがとうございます。」

 

 「さて、騎士たちに連絡がつかないとなると如何したものか・・・下手をすれば他の賊の仲間が来る可能性も・・・」

 信が悩んでいると

「公爵様~~!」「ミュラー様~~!」

「「どこですか~~~!!」」


 ミュ「どうやら迎えが来たみたいですな。」

 「そうだな。」

 二人は立ち上がり騎士たちを呼んだのだった。

 


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