表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

第2話 森の中で2

 青年が木の陰からミュラーと賊の様子を見ていると・・・

 

ミュラー「お前たち!私が、リベール国・三大公爵が一人“ミュラー・ヴァンダール”との知ってのことか!!」

 

 「(!?・・・懐かしい名だな、ミュラー・ヴァンダール。リベール建国当初から続く家系でその長い歴史の中で王と共にリベールの歴史を作ってきた三大公爵家の1つで、俺が王位に就いていた時も随分と助けられた。)」

 

 三大公爵家は、ヴァンダール家、エルヒィード家、リシャール家があり、リベール建国に伴い国王の補佐の立場にある。また、会議でもその発言力は強く政治にも強く影響する。

 この3家の先祖は、皆、初代リベール王家の血筋が流れている

 

 「(ミュラー公爵が生きている・・・俺が知っている公爵よりも年老いたが、まだまだ現役と云ったところか。)」

 

賊の頭「当然。俺達の目的は、公爵様を亡き者にすることさ。」

 ミュラー「依頼人は誰だ!」

 頭「残念ながら、今回の依頼人の名前も顔も知らないんでね。知ってることは依頼人が貴族様の名代だって事ぐらいだな。」


「(・・・貴族同士で勢力争いか?そんなことは俺の代で粗方片づけたと思っていたが。)」

青年は思い出す。王位に就いて、やがて来るであろう帝国との戦に備えて準備を進める一方、不正で私腹を肥やしていた貴族や領民たちに圧政を敷いていた領主、また敵国・エルボニアと内通していた貴族たちを厳しく処罰した時のことを。

「(あの当時は苦労したな、処罰した貴族の縁者、もしくは縁者に雇われた刺客達によって剣を振らない日は無かった。・・・まったく、剣を振るうのは戦場と訓練の時だけでよかったのに・・・)」

と当時のことを振り返る青年。

大粛清を行った国王・レオンハルトは国民からは“賢王”と讃えられ多くの人々から支持を得た。

 また、レオンハルトは幼少の頃より剣技にも秀でており、戦場では如何なる難敵おもその手で屠って来たことから“剣聖”と恐れられていた。

 

 ミュラー「・・・私の地位を・・・公爵の地位を狙う者がおるか・・・依頼主に伝えよ、公爵の地位に就いても陛下を・・・この国を支配することは出来ぬとな!」

 頭「・・・そうかい。遺言はそれだけか?まぁ、名代には伝えておこう・・・お前たち、ヤレ。」

 「(やらせるかよ!)」

 青年は、リーダーの指示に合わせ木の陰から跳躍し賊とミュラーの間に入り賊の武器を弾き懐に一撃を入れ昏倒させた。

「オイオイ。諦めるには早すぎじゃないか?」


 ミュ「・・・陛下?・・・」

 「・・・無事か?(生憎、俺は国王・レオンハルトじゃないんだよ、ミュラー公爵)」


 頭「貴様、何者だ!?」

 リーダーが怒鳴る

 「何者?・・・これから死ぬ奴に名乗っても意味ねぇだろう。さぁ~て、久々の実戦か勘を取り戻すには物足りないかな?」

 青年は構える

 「すぅ~、はぁ~。・・・参る!!」

 それと同時に駆け出す。賊も構え剣を振り下ろすが信は賊の剣を躱しながら懐に入り一撃を叩き込む

 賊「ガァハッ!?」

 信は賊の頭を掴み、そのまま地面に叩き付ける

 「終わりだ・・・“ドンッ”」

 地面に叩き付けられた賊は意識を失ってはいるだけで命には問題はない。・・・信は最初から賊を殺すつもりは無かったようだ。

 

 気絶した賊たちを手持ちのモノで近くの木に縛り付け、今後のことを考えていると・・・

 ミュ「・・・へい・・・イヤ、旅の方。先ほどは助けていただき感謝します。」

 ミュラー公爵が礼を述べ頭を下げる。他の貴族ならこうして助けられた平民に頭を下げるものは少ないだろう、貴族は無駄に誇りがあり平民を道具の様にしか思っておらず常に見下しているのだ。


「はは・・・(変わらないな、公爵は、他の貴族もミュラー公爵のように平民を大事にすれば領内での評判が変わると云うのに。)」

信は自分が知るミュラー公爵が変わってないことに安堵したと同時に

「(そんな貴方だから話せるんだよ・・・)」

 ミュ「?どうかしましたかな。」

「イヤ、気にするな。息災で安心したぞ、ミュラー公爵。随分と老いたが今でも現役か?」 

 ミュ「!?・・・失礼ですが何処かでお会いしましたかな?もしくは知人の貴族のご子息殿ですかな?」

 ミュラー公爵は戸惑っていた、助けてくれた青年が自分のことを知っていたのだから、確かに公爵家ともなればリベール国内で知らない者はいないが、公爵家相手に此処まで砕けた口調で話せる人物は限られる。

 公爵家相手にこのように話せるのは同じ公爵家、そして、王族のみ。しかし、ミュラー公爵が知る限り同じ公爵家にこのような青年を見たことがないし、ましてや王族でも見たことがない。

 

 記憶を探る公爵を見てまたしても笑みが込み上げてくる信

「・・・最初に自分で呼んだであろう“陛下”と。」

ミュラー公爵の眼が見開かれる

 ミュ「・・・では・・・ホントに・・・レオンハルト陛下・・・なのですか・・・」

 公爵の眼から涙が零れる

 

「そうだ。如何いう訳か、またこうしてリベールに戻って来た。」

 ミュ「陛下!」

 公爵はその場で膝を着き臣下の礼を取る

 ミュ「お姿は違えど、またこうして陛下にお会いできたことを神に感謝いたします!」

 「・・・オレもまたこうして公爵殿に会えて嬉しく思うぞ。」

 ミュ「勿体ないお言葉です。」

 

 「そろそろ顔を上げて立ってくれないかミュラー殿。俺はもう王でもレオンハルトでもない、今の名は白鳥 信だ。此方ではシン・シラトリだな。」

 ミュ「シン・シラトリですか?」

 「そうだ、それが今の俺の名だ。白鳥が家名で信が名だ。どちらでも好きな方で呼んでくれ。」

 ミュ「では、シンさま・・・いえ、シン殿と呼ばせていただきます。」

 「ああ、それでいい。・・・さてミュラー殿、聞きたいことがあるんだが。」

 ミュ「はい、何なりと。」

 「では俺が亡くなって何年経った事。今の帝国とハルバールとの関係。リベールの状況を説明してくれないか?」

 ミュ「分かりました。お話しします。」

 ミュラー公爵は静かにその唇を動かした


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ