こんなんありえない
「あっはっは……嘘でしょ?」
目の前に広がる砂漠を見て立ち尽くす。こんなの西遊記の映画でしか見たことないです。
360度。見渡す限り砂漠、砂漠、砂漠。……あれ、おかしいな。目から汁が出てきた。
始まりは、なんてことはない。私は巻き込まれたにすぎない。つまり被害者である。
ふざけんな慰謝料払え。私はただ、家でゲームをしてただけなのに、なんで、なんで。
「やった!ついに手に入れたぜ!“アドベンチャー・シークレット”!!」
何がシークレットなのか知らないが。あれだ、きっと秘密の秘宝があるとかそんなんだろ。
見つけて稼いで遊ぶみたいなやつだろ、ははは!言わなくても分かってるさ!
兎に角、限定全国で100名様先着のこのゲームが手に入ったときは嬉しすぎてひっくり返るかと思った。(まぁソファに座ってたからひっくり返るわけないけど)
「ふんふふ~ん♪やっとできるよ~。」
るんるん気分でゲテレビをつける。説明書?何それおいしいの?
大丈夫!こう見えてもけっこうテレビゲームやってるから!こんなん、どれも基本は同じだって!
「よーし!いざ、レッツゴー!」
ぽち
平凡かつわくわくするこの瞬間。
あれだよ、はじめてわたあめ買ってもらった感じ。
“よく来てくださいました。貴方はすでにこの世界の住人です”
テレビ画面に四角い枠が浮かび上がり、そこに文字がうたれる。あれ、意外と古いイメージ。
「ふんふん。それで?」
“勇者様のお名前及びプロフィールを入力してください”
「勇者様、だと……!」
いいねいいね!なんか照れるぜテヘ☆
「え、っと……。」
ぽち
“確認をさせていただきます。
お名前:まい
性別:女
利き手:右
一番初めの武器:剣
でよろしいでしょうか?”
“YES”
「よし!」
元気に返事をして、 「しばらくお待ちください」 の画面を見つめる。
私は、気付かなかった。いや、ここでおかしいと気付く人なんていたのだろうか。兎に角、私は気づいていなかったのだ。この、罠に……。
“それでは、ようこそ。勇者よ。アドベンチャー・シークレットの世界へ!”
「……へ。」
ピカッ!!
テレビの画面が激しく音をだし、光が私を大きく包んだかと思ったら。
「……えっ?!」
私は先ほどいたリビングから離れ、テレビの中に吸い込まれていった。
「きゃあぁぁぁぁぁ!!」
「ありえない。」
そして、現在に至るわけである。
“こんにちは!ようこそアドベンチャーの世界へ!”
「きゃあぁぁ!」
いきなり現れた四角い枠と文字、それに合わせて聞こえる機械音に心臓が止まるかと思った。今のでぜったい3年は寿命が縮んだ。
“まい様、何かご質問はございますか?”
「すぐにゲーム会社にクレームの電話入れて!」
“ご質問がないようでしたら、ゲームの説明をいたします”
「おいごら、無視すんな。」
“まい様はこの世界において『異端者』でございます。”
「勝手に人を連れて来ておいてウイルス扱いか。」
“この世界では、お金とは『ポイント』のことを指します。
そのポイントはあらゆるところで手に入ります。
多くの人は、クエストやゲーム、ものを売って手に入れます。”
「クエスト?ゲーム?ものを売る?」
“はい。クエストとはすなわちミッションです。
掲示板の依頼を了解させ、依頼主の望みを叶えることで、決まった報酬が手に入ります。”
……どっかの漫画やゲームによくある話だな。
“ゲームでは、賭け事やスロットなどのゲームです。
勝つとポイントが増えますが、最近はいかさまゲームコーナーが増えていますのでご注意ください”
「……随分なことで。」
“最後の物売りは、説明するまでもなく、自分の戦利品や持ち物をポイントに変えることができます。
例えば、洞窟で見つけた宝、モンスター、使わない武器など……”
「ちょーっとまった!え?モンスターって言った?モンスターいるの?ここに?!」
“……説明書をごらんにならなかったようですね。
こちらの世界はモンスターと戦うことを基本としたゲームです。”
「のーん!」
いやいや、好きだよ?そういうの!でもさ、自分で闘うなら無理だよ!!
だったらなんか特別な力とかよこせや!ビーム手から出るとか、そんなんないと無理だって!
“残念ながら特殊能力設定はございません”
「あれ?おかしいな。口にしてないのに。心読まれた?」
“それでは、勇者よ!勇ましく戦え!”
「待て待て待て!!このゲームって何をしたらクリア?!延々と続くやつじゃないでしょーね?!」
“魔王を倒してください。サクッと”
「サクッと倒せる魔王なんか魔王じゃねーよ!てかお前が魔王だろ!”
“なにかありましたら呼んでください。それでは”
「え、ちょ、待っ……!」
ぶつん
そんな機械音とともに目の前の画面が切れ、私は茫然とこの砂漠で突っ立っていた。
「……呼ぶって、どうやって?」
こんなん、ありえない。
(今日の反省。とりあえず今度からは説明書を読もう)




