81
思わず隣の席で握りこぶしを作ったあたし。
その手をいきなりぎゅっと握ったのは雄輔。
「カノン、おめー、人の話聞いてねーだろ。
オレ、彼女いるからっつったろ?
なぁ?」
ひきつったあたしの顔をのぞきこむように
ニヤリと笑った雄輔。
「え・・・・?その子なの?」
ちょっと引き気味のカノンさんとやら。
その引き方の意味を
あたしは教えて欲しいんだけど?
そんなに引くほどあたしが雄輔と合わないって?
むすーーーっとむくれたあたしの顔を
雄輔がムニョムニョとゆがめて笑う。
「顔ひきつってんぞぉ?
ンな顔すんじゃねー。ば~か。」
ふふんと笑って
雄輔は何もなかったかのように前を向く。
でもその手はしっかりあたしの手を握ってて
あたしの指の形をさわさわと指先でなぞっては
わざと隣の席から見えるように
指をからませた。ちょっとくらいいいじゃねーか。」
「雄輔・・・・ちょっと・・・」
「んだよ・・ちょっとくらいいいじゃねーか。」
わざとらしく雄輔があたしに絡む。
「ふ・・ふん!なによ!」
真っ赤な顔をしてあたし達を見ながら
席を立つと、カノンさんは
あたし達から遠く離れた席に移っていった。
雄輔は、それを見届けると
「終わったら起こせよ。」
って、朝から爆睡。
・・・・・・・・・・・・・
その寝顔を時折見ながら
そっとほほ笑んだ。
爆睡している雄輔の手に目をやる。
寝るんだったら、
手、離しなさいよね・・・