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「もしかしてさぁ・・・」
「ん?」
帰りの電車であたしは気になっていたことを聞いた。
「軽音のおねーさんたちと
ケータイ番号とか交換してたでしょ?
あそこ入ろうとか思ってんの?」
へ?って顔して雄輔が言う。
「んなわけねーだろ。
オレ、入る部は決めてっから。」
「うそ・・・聞いてないけど?」
軽く落ち込む。
昔っから雄輔って自由なヤツだったけど
今も変わんない。
仮にもあたし、彼女だよね・・・?
教えてくれてもいいと思うけど?
「あかり、何年オレといるんだよ。
オレが野球以外するわけねーつーの。
マネージャー、しっかりしろよ!」
そう言ってニッと笑うと
コツンとあたしの頭を小突いた。
翌日、あたし達はグラウンドの奥にある
野球部を訪ねた。
「お!もしかして入部希望?」
わらわらっと雄輔の周りに人が集まる。
「野球やったことあんの?」
問われて雄輔は足もとに見えたボールを拾い上げた。
「ちょっと受けてくれる?」
そういうと雄輔は
担いでいた荷物をあたしに渡すと
グローブを受け取り
グラウンドへ。
バシッと心地いい音がして
雄輔の球が相手のグローブに収まった。
「へー、いい球投げるじゃん。」
「あんたもな。」
久しぶりのボールの感触が
嬉しくてたまらないような顔をして
雄輔が球を投げる。
懐かしい・・・・
それに、やっぱり、カッコいいな・・・・
あたしの甘い視線とは裏腹に
先輩たちは好奇の視線で雄輔を眺めていた。
「アイツ、ちょっと変わってんな。」
「あの、悠斗の球受けてんぞ。」
みんなが囁く中
雄輔たちのボールの速度は
みるみる速くなっていく。
「おっし!入部届け書いとけ。」
やがて戻ってきた雄輔は、
悠斗さんとやらにそう言われ、さらさらと名前を書いた。
「んで、もう一人いいだろ?」
「誰だ?」
「マネージャー。」
雄輔があたしに紙を回そうとしたら
すっと悠斗さんにそれを引きあげられた。
「ワリぃが、女は入れねー。」
「コイツはマネージャーとして・・・」
「だから女はいらねーっつってんの。」
・・・・・・・・・・・