77
入学式を終え、
初めてのキャンパスを雄輔と散策する。
「君たち新入生だよね~」
「うち寄ってかなーい?」
「お菓子もあるよ♪」
わらわらと寄ってきた
先輩らしき人たちに囲まれて
びっくりしている間に
腕を取られ、椅子のあるところに
座らされた。
ん?
落研?
「一緒に寄席やんなーい?」
「「やりません。」」
あたし達は即答し、
さっさとその場から離れた。
「落研なんて、はやんないよね。
俺らとテニスで汗かこうや♪」
にこやかに寄ってきた
ちょっとイケメンなお兄さん。
あたしが口を開く前に
「ほら行くぞ!」
雄輔が腕を掴んで突っ切った。
時間的なものか、
学食には人がまばらだった。
あたしと雄輔は窓際の席に座って
自販機のコーヒーを飲んでいた。
「大学って、すさまじいね・・・」
「あかりがボーーっと歩いてっからだ。」
何げなく言われて
ちょっとムカッ。
どっちへ行っていいか
まだ分かんないんだから
しょうがないじゃん。
「時間割、どうやって作るんだ?
意味不明なんだけど・・・」
受け付けで貰った大きな封筒の中には
来週までに時間割を作り
履修届を提出するようにと
たくさんの資料が入っていた。
雄輔が大きな表を見ながら
ため息をつく。
初めて見る大きな表に
どうしていいか分からず戸惑っていると
「あら、一年生ね?
履修表で困ってるの?」
と、数人のお姉さんたちがやってきた。
「この先生ね、毎回レポートがあって
結構大変だったよ。」
「あ、この授業は、
教授の書いた本読んどけば
楽勝で単位とれるからお勧め♪」
「この先生、面白いよぉ♪
しかもイケメンだし♪」
聞きもしないのに、あれこれと情報を教えてくれる。
で、
「あたしたち、軽音部なんだ♪
一緒にやんない?」
と、声をかけてきた。
「やんないけど、これ、
もうちょっとおせーてくんない?」
ニコッと笑って雄輔がお姉さんに言った。
「いいわよぉ♪
でも気が変わったら入ってね。」
と、お姉さま方は時間割を組み立てるまで
ああだこうだと教えてくれた。
おかげで仕組みを理解出来た。
出来たけど・・・・
「サンキュー♪おねーさん♪」
と手を振る雄輔と、
「またねー♪雄輔くん♪」
と手を振り返すお姉さま方を
あたしは複雑な思いで見ていた。