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「っとに・・・・信じらんねー!さっさと来いよ!」
「ンなこと言われても・・・!」
「いいから!」
ケータイを耳に当てながら
必死こいてあたしは改札を通り抜ける。
あーーー、
慣れないパンプスが走りにくい・・・!!!
ホームからは電子音が聞こえて
「間もなく、列車が参ります・・・」
とアナウンス。
精一杯足を動かして階段を駆け上がる。
「あ・・すいません。」
雄輔が車掌さんに謝る。
体半分だけ電車に乗ってドアが閉まらないように
待っていてくれた。
「お前なぁ・・・今日くらい早く起きらんねーか?」
動きだした電車の座席にぐったりと腰かけて
あたしは大きく息を吐いた。
いつしか必死の受験生生活も終わりを告げ
晴れて大学生となったあたし達。
入学式の朝、目覚めて慣れないスーツに身を包み
初めての化粧をして家を出た。
ちゃんと時間に間に合うように出たのよ?
間違いなく。
でもね・・・
「ヤダぁア・・・・電線・・・・」
自転車のペダルにうっかり引っ掛けたストッキングは
遠慮なく電線を伸ばしてくれた。
慌ててコンビニでトイレを借りてはき変える。
でも、トイレで着替えなんて
メッチャしにくい・・・・・
しかもスーツ。
慣れないパンプス。
何とかはき変えて慌てて駅へ向かったけど
遅刻しそうになったのは突発的事故のせいだと思いたい。
だって・・・・
伝線したストッキングで雄輔と歩ける?
おかげであたしは
あこがれのキャンパスライフを
雄輔のあきれ顔を見ながら始めることになった。