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・・・・・・・・・
「なぁ、怒んなよ。」
「怒って無い。」
「んじゃ、そんなにムスッとすんなよ。」
「してないでしょ!」
「ほらぁ・・・怒ってんじゃねーか。」
・・・・・・・・・・・
怒るなって言う方が無理でしょ?
ステージに連れ去られた雄輔は
「いやぁ、公衆の面前での
『一晩一緒に!』宣言はいかがですか?」
と、司会者に問われ
祈るような視線の彼女に
「嬉しいです!」
と元気よく答えた。
そりゃね・・・
それ以外の答えは空気壊すよ。
分かってる。
分かってるけど・・・・
あたしが怒るの、間違ってる?
「ほれ、これお前にやるから機嫌直せよ。」
と、雄輔は参加賞の可愛い付箋を差し出した。
あたし好みの甘い色合いの可愛い付箋・・・
だけど、それがあの
屈辱の時間の代償だなんて
見るのもイヤだと思ったあたしは間違ってますか?
「そんなモノもらいたいわけないでしょ!」
あたしの雄輔が一瞬でも
他の子と並んでみんなの前にいたことが
どうしても納得できなかった。
ただのヤキモチって分かってる。
分かってるんだけど、
どうしようもないんだから仕方がない。
「ちょっと座れ。」
いきなり雄輔は近くの校舎の階段に
あたしを引っ張っていくと
グイッと引っ張って座らせた。
「何よ!」
自分の胸の嵐が抑えられず
そっぽを向くあたしに
雄輔はごく自然にあたしのあごに手をかけると
そのまま文句を言いかけたあたしの口に
そっと唇を重ねた。
・・・・・・何この気持ち・・・・
す――と怒りの塊がどこかに消えてく。
甘酸っぱい気持ちが胸の奥から湧き出してきて
切なくなった。
「心配すんな。
あかりしか好きになんねーから。」
耳元でそっと囁かれて
あたしはその甘さにクラクラ・・・・
約束だよ・・・・
絶対だかんね・・・・