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結局雄輔の手が気になって
映画には集中できずじまい。
アクションシーンではドキドキするものなんだろうけど
あたしはずっと別の意味でドキドキしてた。
長いこと一緒に大きくなってきたのに
友達でいるのと
こうやって付き合ってデートしてるのとは
全然違うんだね・・・
「腹減ったぁ!」
映画の後、雄輔はいつになく優しい表情で
あたしを見つめた。
その眼差しにドキッとまた心臓がはねる。
ファーストフードのお店に入り
店内から通りを歩く人たちを眺め
ハンバーガーをむしゃむしゃ。
ま、大口開けて食べても
相手が雄輔だから
大丈夫でしょ。
こういうとこは
幼馴染だと楽かも・・・
「雄輔、ちょっと海でも見に行く?」
「おう。」
地元には定番のデートコース。
そういえば、いつぞやの部長たちのデートは
海だったっけ・・・・
シーズンオフの海は
優しく凪いで、穏やかな時間が流れる。
大きな流木があったので
その前に座るとちょうど背もたれみたいになった。
二人並んでじっと遠くの波を見つめる。
「静かだね・・・・」
「そうだな・・・」
雄輔の腕が肩に回る。
スッと抱き寄せられて
一瞬体が固まったけど
そっと雄輔の肩に頭をもたれさせた。
ちらっと雄輔の顔を見上げると
照れくさそうにニッと笑ってた。
幸せ・・・・・・
何だか生まれて初めてそんな気がした。