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気まずい・・・
気まずい・・・
どうしてこんなに気まずいんだぁ・・・!
今あたしは雄輔と一緒に電車に乗っている。
「なぁ、ベタだけど映画でも行かねーか。」
何げなく誘われて出かけたけど
手・・・・・・・・・・・・
いきなり握られたまま
電車の中でもそのままで、
あたしはちょっと硬直していた。
そんなに混んでいない車内。
手、汗かいたらどうしたらいいの?
これ、いつ離すんだろう。
一緒に学校の行き帰りに二人で歩くのとは
何だか雰囲気が違って、妙にぎこちない。
雄輔もさっきから遠くを見つめたまま
何も話さない。
あたしもこういう時、何話せばいいか分かんなくて
手の先に雄輔を感じつつ窓の外を眺めていた。
あたしはドラマも映画もあまり見なかったから
特に見たいものは無かったけど
雄輔はアクションものの映画で見たいものがあったらしい。
「好きなの選んでいいぞ。」
って、言われたけど
二人でどんな顔して恋愛ものとか見りゃいいの?
ほんとはメロメロの恋愛物みたいけど
無難にシリーズもののアクション映画にした。
きっとこれ、雄輔好きだし。
館内はあまり混んでなくて、
人の少ない真ん中あたりに並んで腰を下ろした。
コーラとポップコーンを前に置いて
始まるまでの間、当たり障りのない話をする。
「これ、雄輔見たことあるんでしょ?」
「ああ。前回は、たしか決着が付かず終わってた。
ヒロインがさらわれたけど、
あれもどうなったか分からずじまいだったかな。」
「へぇ・・・」
話しているうちに館内の証明が落とされた。
一瞬周りが見えなくなる。
・・・と、雄輔がちょっと体を浮かせた。
ん?どこかに行くの?
と思ったら、不意にあたしの目の前に
雄輔の影が覆いかぶさる。
一瞬何が起こったか分からなかった。
雄輔は何事も無かったかのように
また席に着いて前を向いている。
・・・・・・・・・・・・・
あたしは、さっき一瞬通り過ぎて行った
唇への柔らかい感触と暖かさを
無意識のうちに左手でなぞっていた。
ドキッ・・・・
前を向いたままの雄輔の手が
そっとあたしの右手に重なった。
その手が触れた部分は
心臓のようにやけにドキドキした。