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「それと無視してたのと何の関係が?」
抱きしめられた体制のまま
照れてやけに口が滑る。
それに動悸が・・・・
「ほんと、ニブイのな。
勉強できるくせに、っとにバカなヤツ・・・」
「ほんとにバカな雄輔に言われたくないし。」
ああ・・・サラッとこういうかわいくないセリフが
どうして言えてしまうんだろう・・・
雄輔の胸がドキドキしてる。
そっとその背中に手を回すと
雄輔の腕に力がこもった。
「歯、食いしばられると結構へこむんだよな。」
苦笑しながら雄輔が言う。
「だって・・・緊張してたんだから。」
「今は?」
「今も・・・」
ふーーーと大きく息を吐いて
雄輔はあたしから腕をほどいた。
あたし達は部室の長いすに座った。
ほんの少し距離を取って。
「自分で止められそうになかったからさ。
離れるしかなかったし。」
ちょっとさみしそうに言う雄輔に
思わずあたしは言ってしまった。
「止めなくていいのに。」
「は?マジで言ってんの?
っつーか、意味分かってる?」
驚きとからかいの色をたたえた目が
あたしの眼の奥を覗き込む。
至近距離。
大好きな雄輔の目。
まるで魔法にかかったかのように
自分で信じられない言葉が口から飛び出した。
「分かってるって。
雄輔ならいいよ・・・・・・・。
ずっと好きだったし・・・・。」
その瞬間、あたしと雄輔の間に会った距離は
あっという間に縮められ
肩を抱き寄せられた。
「後悔すんなよ。」
「するわけないでしょ・・・」
「じゃ・・・」