⑥
ある日、あたしの上履きが消えていた。
よくある嫌がらせだけど、
その原因があたしには思い当たらない。
周りを探すと、
下駄箱の近くの植え込みの中に
放り込まれていた。
「誰よ・・・こんなことすんの・・・」
ため息をつきながら
土を払って上履きを履いた。
教室に入ると、あたしの机は少しゆがんで置いてあった。
「誰かぶつかったのかな?」
そうじゃないことを感じつつも
誰にともなくつぶやいた。
そうであって欲しかったし。
休み時間、あたしはトイレへと急いでいた。
教室移動のために
ちょっと時間が迫っていて
忙しかったから・・・。
そんなときに限って厄介なことに巻き込まれた。
「ちょっと、調子に乗ってんのってあんた?」
「?あたしじゃないです。」
「よく言うよ!コイツだって!」
何のこと?
何であたしは、からまれてんの?
「雄輔に付きまとってんじゃないよ。」
ブラウスの襟首を掴まれる。
「雄輔は香織の彼氏なんだかんね!」
「ちょっとぉ。まだそんなんじゃないって。」
香織というのはこの人か・・・
ちらっと見たその人は・・・・
いつぞやのマネージャー・・・
そういう事・・・なのね?
照れながらも、あたしを睨んで言った。
「でも、あんたに手出しはされたくないんだよ。
分かってる?」
意味分かんない。
あたしがいつ雄輔に手を出した?
「分かったら雄輔には手を出すなよ。」
乱暴に突き放されて
ブラウスのボタンが一つ取れた。
転がったボタンを黙って拾う。
あたしが一体何したって言うの?
ムカムカっとして、あたしは半ば切れた。
「あたしは別に雄輔に手なんか出してません!
変な言いがかり付けないでください。」
一応先輩らしいので敬語。
でも、睨みつけながら思いっきり不機嫌。
バチン!!!!
盛大な音が響いて、数秒後に
頬に痛みを感じた。
「生意気!いい加減にしたら?」
捨て台詞を残して
チャイムと共に消えて言った先輩たち。
口惜しくてこぼれそうになる涙をギュっとこらえて
遅刻して教室を移動した。
「こら!何でおくれ・・・」
と言いかけた先生が思わず口をつぐむ。
「遅れてすみませんでした。」
一言言ってあたしは自分の席へ。
クラスのみんながあたしの顔を見つめる中、
何とか涙をこぼさずに
席に着くと、何事もなかったかのように
あたしはノートを取り始めた。




