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「あの・・・自分でちゃんと話しますから
大丈夫です。」
「出来ねーから泣いてたんだろ?」
そりゃそうだけど・・・
「それに近寄るなって言われて
どうやって話するわけ?」
・・・・・・・・・・・・
これから避けられるってこと?
今までそんなこと一度だってなかったのに。
らしくないよ・・雄輔。
「じゃ、まず何で近寄るなって話になったの?」
「突然。」
「んーー。その前に何かあったんだろ?」
「・・・・・・・・」
「何があったか言えば分かるぜ?きっと。」
小塚先輩がじっとあたしの顔を見る。
・・・・言えるわけない。
ファーストキスを奪われたなんて。
黙っているあたしに小塚先輩は
小さくため息をついて言った。
「んじゃさ、多分雄輔は
マネージャーを避けるだろうし、
オレと付き合うってどう?」
「んな冗談、言わないでください。」
「冗談じゃないけど?」
今このタイミングで口説くとは
どういう神経?
もしかして失恋したては
口説くチャンスと思ってる?
残念ながらそういうのは
あたしには当てはまらない。
よし!
雄輔に直接聞いてみるしかないか。
そう決めたあたしは勢いよく立ちあがった。
「先輩、ありがとうございました。
今から追及してきます!」
いきなり復活してきっぱり言い放ったあたしに
小塚先輩は一瞬驚き、
「あ・ああ。」
と、曖昧な返事を返してあたしを見送った。
帰ろうとしていた雄輔の背中を見つけ
あたしは思いっきりその背中に向かって
かけ出した。
あたしとあんたの付き合いって
昨日今日じゃないんだかんね。
甘く見るんじゃないわよ!
あたしの恋心を。
一方的に言われておしまいなんて
ありえないんだから!