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バカ・・・バカ・・・雄輔のバカ!
あたしは一人薄暗くなった道を帰りながら
悲しくて仕方なかった。
女の子たるもの、
ファーストキスに夢を見ることくらい
想像つかないんだろうか。
あんなのがファーストキスなんて
悲しすぎるでしょ・・・
相手は大好きな雄輔だけど
ほんとはちゃんと心を通わせて
ちゃんと目を見て、
優しい言葉の一つもかけられて
それで、甘い時間を共有したかった。
なのに・・・・
思い出しても悔しくて
成り行きだなんてサイテーな事言われ
雄輔にとっちゃ、大した意味もない
そんな行為だったんだろうか。
それからあたしは雄輔の顔が
まともに見られなくなった。
というか見たくなくなった。
好きな人に裏切られた気分というのは
なんとも言えず複雑で
裏切られたといっても
あたしの中でそう受け止めてるだけで
雄輔にとっちゃ“なりゆき”なんだけど。
「あかりちゃん、どうしたの?
雄輔くんとけんかでもした?」
みさと先輩に言われて、
思わず胸の内を漏らした。
「あかりちゃんって可愛いね♪」
みさと先輩はニッコリ笑ってあたしを見た。
「どうしてですか?」
不思議そうに聞くあたしに先輩は言った。
「だって、恋愛に夢見てて
それを大事にしてて・・・・・・・・
擦れてないっていうか、初々しいっていうか♪」
初心者ってことですか・・・・?
ま、そうなんだけど。
先輩は真顔に戻ると
必死にボールを追う部員たちを見ながら
あたしに言った。
「相手も同い年なんだからね。
王子様役を求めるのは、ちと酷じゃない?
俊介もそうだったけど、
結構いっぱいいっぱいみたいだよ。
恋する男の子もね。」
・・・・・・・・