⑤
学校からの帰り道、
クッタクタになったあたしは
ラケットや荷物を担いでとぼとぼ歩いていた。
「あかり、最近オレに何か怒ってんのか?」
いきなり後ろから聞こえた声にビクッとする。
振り返ると野球のユニフォーム姿の雄輔がいた。
「べ・・別に、何にも・・・・」
慌てて答えた声は、ひっくり返っていた。
そんなあたしを雄輔は
面白そうに見てる。
最近の雄輔は、何だかオトコっぽくなって
カンが狂う。
今までみたいにじゃれてはいけないような
かと言って、他人行儀にも今更出来ない。
鞄を肩に引っ掛けて
雄輔はあたしの隣を歩いていた。
それがまるで当たり前みたいに。
ちょっと前までは毎日当たり前に
一緒に帰ってたのに
なんか妙にドキドキする。
余計不機嫌な顔になったあたしに
雄輔はいきなり、ほっぺを
プニ~~~~~って引っ張ってきた。
「もう!何すんのよぉ!」
思わず振り上げた手を
軽く捕まえられた。
「お前にぶたれるほど
トロ臭くねーって♪」
あたしの手を掴んだまま
雄輔はニッコリ笑った。
あたしは真っ赤な顔して
雄輔に掴まれた手を振り払う。
腹立つけどなんだか嬉しくて
だけど照れくさくて・・・・
なんだか不思議な甘い気分だった。
そんなあたし達をちょっと離れた後ろから
たくさんの目が見ていたことを知るのは
翌日のことだった。