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びっくりして音がした方を見ると
走ってたはずの雄輔と先輩たちが
フェンス際で睨みあってる。
さっきの音は
雄輔の背中がフェンスにぶち当たった音らしい。
雄輔をフェンスに押し当てているのは
2年の福井先輩。
綺麗な顔してるけどちょっと性格悪い福井さんは
何かと雄輔をからかうようなことを言っていた。
「ちょっとあんたたち、何やってんのよ!」
みさと先輩が走りながら声をかける。
それには答えず、福井先輩は
雄輔を睨みつけていた。
「謝れよ!」
「お前がわりぃンだよ。謝んのはそっちだろ。」
意外と冷静に受け答えする雄輔。
でもその目が・・・怒ってるよ・・・
「生意気なんだよ!
1年のくせして!」
「ちょっと福井君、手離したら?」
みさと先輩の言葉にもまるっきり耳を貸さない。
「いい加減離せ。」
雄輔が低い声で言う。
「お前が謝ったらな。」
「いいから離せっつってんだろ!」
そう言った瞬間、雄輔の腕が福井先輩の腕を
叩き落とした。
「いってぇ・・・このヤロ―!!!」
福井先輩が雄輔の顔めがけて
拳を突き出した。
綺麗にヒットしたパンチに、雄輔がよろめく。
「殴り返してみろよ。お前のマネージャー、
見てるからいいカッコしてーンだろ!」
挑発するように雄輔をあおる福井先輩。
あんたねぇ・・・・
雄輔じゃなくっても怒るって。その言い方。
でも、ここは、マネージャーとしては
喧嘩を黙って見ておくわけにいかない。
怪我でもされちゃ大変だし、
おおごとになったらそれこそみんなが迷惑する。
「雄輔!ダメ!」
殴りかかる態勢を取り始めた雄輔に
思わず声をかけた。
そして、雄輔と福井先輩の間に強引に割り込み
両手を広げて雄輔を止めようとした。
「福井君もそこまでにしときなって。」
みさと先輩も止めに入る。
「「そこ、のけ!」」
あたし達の頭の上で二人の声がハモる。
お願いだからこんなとこで喧嘩しないでよ・・・