48
「こら、何騒いでんだ?」
キャッチボールをしていた部長が
雄輔たちのところへやってきた。
「何もないっす。」
平然と言い放ってキャッチボールをしようとした雄輔に
2年の先輩がまた絡む。
「んな隠すことねーだろ?
あんだけ派手に見せつけといて
何もねーわけねーだろ。」
ニヤニヤした顔に向かって雄輔は
いきなりボールを投げつけた。
「あぶねーだろ!」
「あぶねーのはお前の頭だろ!」
一触即発の空気をぶち破ったのは
部長だった。
「お前ら頭冷やして来い!
ランニング3周!」
ああいうところは、けじめがついて
部長はカッコいいと思う。
ふと隣を見ると、みさと先輩が珍しく
部長に見とれていた。
渋々ランニングを始めた雄輔たちに
みんなが興味津々で目を向ける。
「あんなに怒るってことは
やっぱ図星か?」
「ちょっと閉めて吐かせるか?」
「いやぁ・・・アイツは口割らねーな。」
勝手な事を言っている部員に
「お前らも走りたいか?」
と部長が気味悪いくらいの笑顔を見せた。
やっと落ち着いたらしい運動場にほっとしたあたしに
「で。あかりちゃんの方は?
王子様にさらわれた後、何してたの?」
って、ニッコリ聞いてきた。
何してたって・・・
「二人で大口開けてハンバーガー食べてました。」
「それから?」
「もちろん家に帰りましたけど?」
「途中でどこか寄らなかったの?」
「はい。」
「せっかく二人だったのに?」
「・・・・・・・・・・」
「だって・・・雄輔が帰ろうって言ったから・・・
用事もなかったし。」
あたしの答えにみさと先輩は
くすっと笑って
「普通は用事がないから帰らないんじゃない?」
って言う。
そうかなぁ・・・そうかもしれない。
でもデートじゃなかったし・・・
なんて思ってたら何かがフェンスにぶつかったような
大きな音がした。