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ギャラリーがいると、オトコって頑張る生き物らしい。
いつもにも増して真剣に練習してる。
休憩になるまで、必死でカッコいいとこ見せようと
ミスもいつもより少ない。
・・・・・・・
まぁ、いいことなんだけどね。
いつものようにあたしとみさと先輩は
大きなやかんにお茶をどっさり作って
休憩中に配る。
「もしかしてあの子たち、昼休みの?」
部長が汗を拭きながら
あたしに聞いてきた。
「はい・・・すみません。」
何か申し訳なくて謝ると
「いいよ。みんな頑張ってるし。」
さわやかに笑って
「御馳走さん。」
と、コップをあたしの手にあるお盆に置いた。
目の隅にはフェンスの外で
きゃぁ♪と、小さく悶えてるみんなが見えた。
・・・・・・コップ置いただけだろーが・・・
後半の練習が始まった。
・・・・と、
「いてっ!!!」
ボールを追いかけて勢いよく激突する二人が見えた。
ありゃ・・・・
雄輔と、もう一人、2年生の先輩。
「行くわよ。」
みさと先輩の声とともに
氷とタオルを持って運動場に走る。
痛そうな顔した二人に冷たい氷を渡し、
ベンチへと連れていく。
「意外と、どんくさいことするじゃん。」
あたしの肩に支えられて歩く雄輔に言ってみた。
何と初歩的なミスだろう。
人とぶつかるなんてありえないでしょ。普通。
「だよな。おかげでとんだ巻き添え食っちまったぞ。」
2年の原田先輩が雄輔を睨んで言った。
「お前が邪魔なとこにいるからだろ。」
イラッとしたように雄輔が言う。
・・・・・・・・
「雄輔、ちょっとこっち。」
険悪な雰囲気になりそうなので
あたしは雄輔を部室へと連れていくことにした。
ま、大したことはないと思うけど
喧嘩されちゃかなわないし。
部室で、湿布でも貼って
ちょっと心もクールダウンしなくちゃね。
「雄輔、先輩に絡むのはやめときなよ。」
湿布を貼りながらあたしが言うと
「うるせー。」
って、そっぽ向きながら
雄輔はふてくされた顔をした。
・・・・・・何かいつもの雄輔と違うなぁ・・・
あたしにはこんな態度とることなかったのに・・・