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マネージャーの仕事は
思ってたよりずっと地味で
本当に縁の下の力持ち的な存在だった。
ちょっとした繕い物、洗濯、お茶の準備、
後片付け、部室の掃除・・・・
みんなの練習を見てるだけじゃなくて
やることはたくさんあった。
「あ―――死にそうーーー!!!」
練習中に休憩の号令がかかると
一斉にお茶配り。
「うめーーー!」
ニッコリ笑顔でそういう反応されると
マネージャーとしては
「お代わりあるよ♪」
って、サービスしたくなる。
休憩時間はあたし達は大忙しで
終わったら片付けとお茶作り。
先輩マネージャーのみさと先輩は
笑顔の可愛い2年生。
みさと先輩と一緒にお茶を作りながら
ふーーっと一つため息をついた。
「どうした?疲れた?」
ニコッと笑ってみさと先輩が聞く。
「いいえ。そんなんじゃないんですけどね。」
「ん?もしかして気になる人でもいた?
うちの野球部、粒ぞろいだから♪」
そうなんです。
3年の部長をはじめとして
野球部はイケメンぞろい。
ドラマのイケメンパラダイスも真っ青ってか?
目の前でそんな彼らが
必死にボールを追っかけてるのを見ると
それが雄輔じゃなくても
キュンと胸が締め付けられそうになる。
メッチャ素敵なんだもん♪
一番素敵なのは雄輔だけど♪
思わず赤くなったあたしに
みさと先輩は明るく突っ込みを入れた。
「先輩の誰か?1年生から見ると
大人でしょ?思わずクラッと来るよね。」
「いや・・・そんなことは・・・・」
「んじゃ、え?1年なの?」
「え!あの・・・」
慌てたあたしに、
「あかりちゃん、かわいいねー。
んじゃ、来週までに誰か観察しとくわ♪
あ、部長はやめた方がいいよ♪
彼、女癖悪いから。
性格はいいんだけどね。」
・・・・・・・・・・・・・・・・
そうなの?
向井理によく似た部長に目をやる。
そういう人なんだ・・・・へぇ・・・・
重いやかんを運びながら
運動場を眺める。
「ほら、みんな練習終わったみたいよ。
部室ドア開けてくるね!」
カギを預かっているみさと先輩は
やかんをテーブルに置くと
さっさと次の仕事に取り掛かる。
みんなの着替えが終わったころ
部長にポンと肩を叩かれた。
「あかりちゃん、どう?もう慣れた?」
いきなりな部長の出現に
ちょっとびっくり。
「あ、はい!なんとか。」
ちょっと緊張して答えるあたしに
部長は柔らかい笑みを浮かべて言った。
「疲れない程度によろしくね。」
「はい。」
あたしの返事に満足そうにうなずくと
ポンポンとあたしの頭に手を置いて
「いい返事だ。じゃ、また明日。」
と、さわやかに去っていった。
大人だぁ・・・・・・・
今まで接したことのない大人な態度に
ちょっと放心状態のあたし。
「何ボケっとしてんの?帰んぞ。」
雄輔の声に慌てて鞄を持つ。
「待ってよぉ!」
あたしは慌てて雄輔を追いかけた。