21
時が過ぎるのは早い。
受験生となってから、人目につかないように
勉強始めた雄輔は
3学期にはあたしと同じ高校へと願書を出していた。
やれば出来んだよ!
そう言っていた雄輔。
そんな雄輔がまぶしくて
雄輔が頑張ってるから
あたしも頑張ろうって・・・
そう思ってこの一年頑張ってきた。
「卒業式の日、ボタンもらうんだ♪」
何人かの子が嬉しそうに話しているのを聞くと
あたしも雄輔に・・・・って思う。
きっと嫌って言わないよね・・・・
「雄輔くん、ちょっと!」
間もなく卒業というある日
隣りのクラスから雄輔に呼び出しがかかった。
呼んだ子は、友達を後ろに連れている。
「ほらぁ、呼んだげたわよ。」
「え――、でも・・・・」
「でもじゃないって。じゃ、頑張ってね。」
渡り廊下で雄輔は隣のクラスの子と
二人で向かい合っている。
「何か用?」
「あの・・・・これ・・・・読んでください!」
真っ赤な顔して雄輔に一通の手紙を押しつける。
そのまま帰されるのを恐れるかのように
全速力で逃げていった。
残された雄輔は、小さく息を吐くと
くすっと笑って教室に戻って来た。
「ラブレターもらったの?」
「・・・・・・・・・・・知らん。」
「読まないの?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
雄輔はそのままくしゃっとポケットに突っ込んで
何もなかったかのように友達としゃべり始めた。
雄輔は明らかにさっきの手紙を意識している。
それなのにここで開けることも出来ず
そわそわしている。
あたし・・・・・もしかして
遅れを取っているんじゃないだろうか・・・
ふとそんなことを思った。
ず――っと好きだったけど
一度も好きだと言ったことはない。
もしかして、雄輔に彼女が出来たら・・・
なんて考えると背中に寒気が走った。
そして、数日後に雄輔がその子と肩を並べて
下校しているのを見ると
まるで、
ナイフを差し込まれたように胸の奥が痛んだ。