⑮
「やっぱりあかりのノートはサイコーだ♪」
ここはあたしの部屋。
「雄ちゃん、久しぶりね。
ゆっくりしてってね。」
お母さんの歓迎ムードに
「は~い♪じゃ、遠慮なく。」
と、ちゃっかり乗ってる雄輔。
「ちょっとは遠慮しなさいよ。」
「まあまあ、おばさんもああ言ってることだし♪」
あたしの方見向きもせずに
必死でノート読んでる雄輔。
「取り合えず現状維持が目標だかんな。
時間もねーし。
マジで助かった・・・・」
ちらっと目をあげて
心底嬉しそうに笑う雄輔。
この笑顔に負けたあたし。
でも、言いたいことはちゃんと言っておこう。
「雄輔、ノートはちゃんと見せてあげる。
ただし、約束守ってくれたら。」
「オッケー。あかりとの約束なら
なんだって守ってやっから。」
余裕な顔して言った雄輔。
ふーん、言ったわね。
「男がやっぱ無理、とか言わないでよね。」
「あたりめーだろ。」
「じゃ、同じ高校に入ってね。」
「はぁ?」
一瞬雄輔の顔が固まった。
「無理とか言わないでよね。約束だかんね。」
・・・・・・・・・・・・
顔に無理と書いてある。
でもそれを言わせるわけにはいかない。
「あたしは雄輔と同じ高校に行きたいの。
でも、雄輔にレベルは合わせないから♪」
あたしの言葉に雄輔が固まりつつ
じーーーっとあたしの顔を見つめる。
あたしも目をそらさない。
ここでは負けるわけにいかないっしょ。
結構苦痛な時間。
ドキドキしてきたじゃない・・・・
と、その時、雄輔の視線がふっと下にそれた。
ため息とともに
「しゃーねーなぁ・・・・
お前、オレの成績知ってて言ってんのかよ・・・」
と、声が聞こえた。
それっきり雄輔は何も言わず
ノートを見つめていた。
そしてそんな雄輔を
あたしもなにも言わずに見つめていた。