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「あかり~ぃ♪なぁ♪おい!」
あたしの周りをうろちょろしては
さっきから目を合わそうとする雄輔。
ノート貸さない宣言をしてから
雄輔はほんとにあたしからノートをもらえなくなって
しかも、
あたしの全知能と甘い想いをこめて作った
雄輔仕様のノートだった為に
とーーっても分かりやすくて
他の子のノートでは、
もはや物足りなくなったらしい。
あったりまえじゃん。
あかりさんをなめんじゃないわよ♪
そんなに簡単に落ちてたまるか。
あたしが一旦貸さないと言ったら
そう簡単に貸すわけないでしょ♪
なぜあたしがこんなにルンルンかと言えば・・・
実は、野球部にはある掟が存在した。
学力が前回のテストよりも
トータル30点以上落とすことがあれば
どうあがいてもレギュラー入りは出来ない。
と。
今まであたしのノートで
点数を稼いできた雄輔にとって
まさに死活問題。
レギュラー取れないなんてアイツにとっちゃ
屈辱以外の何物でもない。
そして・・・・・
雄輔が、そんなことは死んでも認められないってことを
あたしはよーーーく知っている。
間もなくテスト1週間前というこの時期に
あたしのノートがないとどうにもならないと
切羽詰まっていた。
「だったら授業中起きて授業聞いてればいいじゃん。」
「ンなこと無理ィ~
いい加減機嫌直して貸せってば。」
あたし達の話を聞いていた一人の女の子が
「雄輔くん、あたしが貸してあげるよ♪
あかりのじゃなくてもいいでしょ?ほら。」
ほっぺをピンクに染めて
一大決心をして話しかけたんだろう。
なのに、雄輔の言葉でその顔は一気に青ざめた。
「余計なことすんじゃねーよ。
オレはあかりに言ってんの!
っつーか、あかりのじゃねーと役にたたねーんだよ!」
「そんな言い方しなくても・・・
中身は同じでしょうが!」
青い顔しながらも精一杯の言葉を返す。
でもね・・・残念ながら同じじゃないんだな・・・
「おんなじじゃねーよな。あかり。」
ニヤッと笑った雄輔。
もちろんです。
「何が違うのよ!
あたしの方が字も綺麗なのに!」
・・・・・悪かったわね・・・・
「ン~~~
強いていえば愛情?」
思わず噴き出しそうになったわよ。
雄輔のアホ!
ほら・・・みんな大騒ぎしてんじゃないの・・・
はぁ。