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「何でオレのせいかと思えば・・・
だったら、さっさとそう言え!
ほら、帰んぞ。」
つかつかっと部室に入ってくるなり
雄輔はまた、あたしの手を掴んで
外へ引っ張り出した。
「雄輔くん!」
マネージャーが、あたしの腕を捕まえて
睨みつけながら言った。
「あんた、あたしのこと好きだって言ったじゃん!」
え?そんなこと言ったの?
「ああ、言ったよ。
オレ、仲間やダチはみんな好きだぜ。
ただなぁ・・・・」
雄輔は言葉を切って
マネージャーとその周りの女の子たちを見回して行った。
「あかりはちっこい時からの大事な友達だ。
オレの大事なヤツを傷つけるヤツは
誰であってもぜってーゆるさねー。
今度こんな真似したら、
女だからって容赦しねーし。」
背中が冷たくなるようなまなざしを向け、
彼女たちを睨む雄輔。
力なくあたしの腕を離したマネージャー。
雄輔は振り返りもせず
あたしの片付けを手伝い、
「ワリぃ。ほんとにオレのせいだったな。」
って、ぼそっと謝った。
・・・・・・・・・・・・・・・
「でも、こんな時はさっさと言えよ。
まどろっこしいことしなくても
ちゃんと助けてやっから。」
「別に助けてもらわなくったって
大丈夫だもん。」
可愛くない返事をしたあたしに
雄輔が正面で立ち止まる。
そして、あたしの頬にそっと手を当てた。
いきなりな行動に心臓は暴走気味。
「こんな風に二度と傷つけられたりすんな。
バーカ。」
そう言ってニッコリ笑った雄輔の眼は
いつものように優しかった。