淑女は、花園で嗤う
前置き段階です。短編にしていこうか。続きものにしようか悩みどころです。あくまでフィクションなので、歴史的文化や慣習等は、あってないようなものと、お考え下さい。できましたら、短編か、続きものか、どちらの方が読みやすいか。ご意見頂けたらと思います。
温かな日差しが差す午後の庭先。芝が敷かれ、アーモンドの木が葉を揺らす。その木陰で、五人の淑女達は敷物を広げてピクニック気分を味わっていた。「気持ちのいい風ね。」「今日は運動があったから、特に疲れたわ。」「わたくしも。」クラブサンドと、柑橘を絞った炭酸水。空腹を満たした彼女達は、まったりと時間をすごす。「あ、パティったら。欠伸は手で隠しなさいよね。」「仕方ないじゃない。急に出ちゃったんだもん。」ベルは、悪びれずにコロリと寝ころがるパティに苦言を呈す。「どこで誰が見ているか解らないのよ?そんな姿、もし見られたらもっと婚約は難しくなるでしょうね。」「やだ、意地悪言わないでよ。」パティは、慌てて身体を起こす。「けれど、あながち間違ってないわよ。」今度はマリーが話す。「たしか、お母様の末の妹、わたくし達より7歳上だったかしら。家の庭で花を摘んでいた姿を、通りを歩いていた今の旦那様が、馬上から塀越しに見られたの。その時に見初められて結婚したって。」話が終わる前に、マリー以外の四人は全員塀の向こうを見ていた。小鳥が止まって、飛んでいった。「…。しょせん、話は話でしかないわ。」リジーはため息混じりに、向きを戻す。「物語のお姫様は王子が迎えにくるけれど、私達は自ら動かなきゃ。」言いながら赤いベリーを口に運ぶ。「眠っていたら、王子様がキスをして、ハッピーエンド。そんな、ふざけた話が現実に起こるなら、私、ずーっと寝てるわ。」パティは再び寝転んで、今度はアンナの膝に頭を乗せた。「重いじゃない。」「あら、男性よりかは軽いわよ。」アンナは読みかけの本に栞を挟むと、静かに閉じた。「私、旦那様が膝枕を所望したとしても、断るわよ。」アンナは、パティを落とす。「あいたっ!」「アンナ、未来の旦那様に膝枕してあげないの?」リジーはニヤニヤと笑っている。隣のマリーとベルも同様だ。「あなた達は、したいの?」アンナの逆の質問に、四人は頭で想像してみる。「…うーん、嫌かも。」「頭、洗ってあるなら大丈夫よ。」「重いと足が痺れちゃうわ。」「あたしは、自分がして貰う方がいいなぁ。」てんでバラバラの答えに、五人は顔を見合せ、アハハと笑った。
ひとしきり笑った後、「私達、まだ早いのかしらね。」「でも、そんな事を言ってたら瞬く間におばあさんだわ。」「修道院にも、後妻にも行きたくないわよね。」「でも、決めた相手が必ずしも素敵な紳士とは、限らないわよ。」「仮面夫婦だって、ざらにあるもの。家の為、利害で結婚して、互いに愛人を囲う夫婦もいるわ。」リジーの言葉に、皆、静まりうつむく。彼女達は、痛感していたのだ。そのような家庭をいくつも見聞きしてきた。自分自身の婚姻の際には少なからず、お互い相手とは敬愛を持って家庭を築きたい。その思いを、彼女達は共有していた。
「一緒の馬車に乗ってても、沈黙が嫌じゃない人。」パティが話す。「そうねぇ。自然にエスコートしてくれる人とか?」ベルが眉を寄せながら話す。「背中を預け合えたら素敵だわ。」アンナは、手元の本の表紙を撫でながら話す。「私の話に耳を傾けてくれる人。つまり、バカじゃないって事だもの。」リジーは腰に手を当て、わざと気取った仕草をした。「あはは、そうね。話し合いが出来るって、最初の一歩だもんね。」マリーは、リジーの仕草に笑いながら話す。
風が吹き抜けていく。彼女達は、まだ、誰にも見つけて貰えない。自分たちの声は、地中に眠る輝石のように届かない。それでも、その内に秘めた輝きは今か今かと、燃えている。




