↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改稿のためお休み】悪役令嬢四面楚歌  作者: 青木あくあ
第一章 追放・冬の季節
PR
1/12

第0話

 薄い雲に陽の光が乱反射し、空全体が輝いている。

 一歩一歩、城壁へと向かい歩む彼女の姿は、絢爛な歌劇の舞台に挑む歌姫のよう。

 風に流れる輝く黄金色の髪、艶やかな肌と唇。

 整った美貌と大きく肩を露出したドレスに、すれ違う兵士たちの口からは感嘆の声が漏れた。


(見られてる……恥ずかしいッ――)


 集まる視線は、普段の彼女があまり受ける類のものではない。

 だが、染まりそうになる頬も、俯きそうになってしまう気持ちも堪え、努めて平静を装う。


(大丈夫、やれることをするッ。できることをやるのッ!)


 かつての皇配候補であり、追放された歌姫――ソアラ・スフォルザンドには、今、ここで為すべき理由があった。

 怯んではいられない。挫けてはならない。

 自分を叱咤し、歩を進め、遂には城外を見下ろす城壁の上へと立つ。


 普段は芳しい新緑の風も鈍色に染まり、瑞々しい生命に溢れている草原も、血なまぐさい黒鉄の甲冑が埋め尽くしている。

 それはまるで、獲物を前に、唸り声をあげている獣のような軍隊の威容。

 普段は戦というものに無縁な彼女の身体を気圧すのに、十分すぎる迫力を放っている。

 だが、ソアラは踏み止まった。


(負けないッ)


 こみ上げた悲鳴を飲み込み、砕けそうになる腰に力を込め、下がりそうになる足を踏ん張り耐える。


(あの日の私とは違う……)


 自分にできること。

 自分にしかできないこと。


(もう、逃げないッ!)


 今日という日を迎えるまで考え抜いた、自分だけの道。

 何も失わないため。

 何も手放さないため。


 ソアラは、戦場で最も高い城壁(ステージ)のうえに無防備に姿を晒し、瞳を閉じて両腕を開く。

 場違いな手段。

 間違った方法。

 それでも、彼女は口を開いた。


 <La~La~LaLaLa~>


 歌声が響く。

 本来神前奉唱のために使う神聖術の力で、拡張、増幅された彼女の歌は常軌を逸した声量で、敵味方問わず戦場の遍くものの上に降り注ぐ。


(さぁ聴いてッ! これが私の、戦い方ッ!!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。