アカルナイの人々
聖ヨハネ北伊勢教会に、メシヤたちが集まっている。
マリアはここに寄宿するシスターである。
「あんたってホントにいつも冗談ばっかり言ってるわねー」
マリアが呆れ気味にコメントする。
「そう? どうせなら楽しくなる話題のほうが良くない?」
メシヤは、お笑いマスターのような返答をする。
「それはそうだけどさー」
そうは言いつつも、ほんのり微笑を浮かべるマリア。
二人のやり取りを遠巻きに眺めるイエスとメシヤの妹・マナ。
「お兄ちゃん、すっかり元気になって良かった」
「ああ、あれでこそ本来のメシヤだよ」
メシヤは、とある施設にいた期間が長かった。
イエスとマナはたびたび慰問に訪れていたが、あの時のメシヤは見れたものでは無かった。
「へえ、あんたの家って料理屋さんやってるのね!」
食べることに目がないマリアは興味津々だ。
「うん、中学にあがるちょっと前から手伝いはじめてさ。いま修行中だよ」
「荒削りだが、こいつのメシは美味いぜ」
イエスが話に加わる。
「イエスくんが言うなら間違いないわね! こいつが自分で『僕の料理は美味しいから』って言ってたら信用できないけど」
「なんだよそれ~。まっ、でもさ。マリアもぜひ食べにおいでよ。クラスメート割引でお値打ちにしとくよ」
「分かったわ。食べさせてもらおうじゃない」
「マリアさん、わたしもご奉仕させていただきます!」
マナが明るくもてなす。
「マナちゃん、えらいわ~。実の兄とは全然違うわね」
「いえいえ、自慢のお兄ちゃんです!」
マナは照れること無く答える。
「なにやら賑やかですね」
背の高い、実直そうな青年が輪に入ってきた。
「あっ、神父さま! おかえりなさい」
「マリアの御学友ですね。ようこそ北伊勢教会へ」
「お邪魔してます。マリアさんのクラスメイトの藤原メシヤです」
メシヤが会釈する。
「ああ、君がメシヤくんですか。マリアからよく話は聞いていますよ。マリアが最近楽し・・・」
「あーっ! し、神父さま、そろそろミサの準備をしないと間に合いませんよ!」
「いえ、まだ充分間に合・・・」
次の言葉を継げさせずに、マリアは神父の背中を押して、そそくさとその場を立ち去った。




