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神力使いの収集屋  作者: さつき けい
第五章 王都到着

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93・結界の危機


 食後、シューゴはハツーナと荷物持ち兄弟を五階の休憩所まで連れて行く。


すでに壁には明かりは点けてある。


「お疲れ様でした。 今日はここで休んでください」


シューゴは簡易御手洗を設置し、キクマから預かったハツーナ用のテントを張る。


「本当にありがとうございます」


ハツーナは素直に礼を取る。


 この後、リーとウーウが合流したら地上へと帰還する予定である。


もう少しでこの仕事が終わると思うと、ハツーナにすれば心残りばかりだ。


俯いているハツーナにシューゴは励ますように声を掛けた。


「もう少しです。 最後まで気を抜かずにがんばりましょう」


ニコリと笑って、焚き火代わりの魔道具のコンロに火を付けた。


「シューゴさん、おれたちも見張りします」


「一晩くらい交代しながら二人で出来ますよ」


荷物持ち兄弟が申し出てくれた。


おかしなことに、彼らのほうが年上のはずなのに、シューゴには丁寧な口調で話してくる。




「では、お二人にお願いしてもいいですか?」


シューゴは二人に任せることにした。


「はい!」


「では、私は相棒を迎えに行ってきます。 ここには魔物は出ないので安全ですから」


念のため、周囲には虫除けと魔物避けの薬も撒いてある。


「良かったら、遠慮なく飲んでください」


魔道具のコンロに小鍋で湯を沸かし、眠気覚ましの茶葉も用意した。




 盲目の貴婦人であるウーウは、ハツーナの『神力』による治療を拒否し、シューゴが組合からの薬を提供して治ったことにした。


竜は『魔族』であり、今は卵も抱えているので、念のため『神力』に触れることを避けたのだ。


ハツーナは落ち込んでいたが、まあ、平民出の神官の治療を拒むのは貴族にはよくあることらしい。


「あのご婦人、気が強そうでしたもんね。 気を付けて」


荷物持ち兄弟が気の毒そうにシューゴを送り出す。


「あはは。 長く地下にいたので精神的にまいっているんでしょう」


そう言って、シューゴはその場を離れた。




 六階の一番広い通路でリーたちと合流する。


「リー、ウーウさん」


二人を手招きして五階へ上がるための階段の近くへ移動。


そこで待機してもらう。


 ウーウは、その『結界』に触れてみた。


「硬いのぉ」


『神力使い』であるシューゴでも、ここの結界はよく分からない。


「どう?、通れそうかな」


ウーウは首を横に振った。


「かなり強固だの。 魔物もじゃが、特にわちしを拒んでいるような気配がするぞ」


シューゴはウーウの言葉を聞いて眉間に皺を寄せた。


(ウーウさんを閉じ込めておくための結界だったのか)


つまり、誰かがウーウがいることを知っていて、意図的に留まらせていたのではないか。


そんな気がしてきた。


(地上に戻ったら少し調べてみるか)




 シューゴはリーたちを休ませ、結界を調べる。


「これかー」


人には無害な古い『結界』が、五階から下の迷宮を包み込むように広がっていた。


「破れそうか?」


リーが心配そうに訊く。


「やれるだけやってみるさ」


シューゴはいつものようにヘラリと笑う。


 リーが弾かれずに済んでいるのは普段から魔力を抑えているからだろう。


それを見破る結界でなかったことに安堵した。


「合図したら、リーが先に上がって、ウーウさんを引っ張り上げてくれ」


「分かった」


シューゴとリーは頷き合う。




(さあ、【集中】だ)


シューゴは『神力』を高める。


『体内に眠りし我が神よ。 我の体を使い、この結界をほんの少しだけ解きたまえ』


シューゴは、階段付近の『結界』に両手を突き『神力』を流す。


「ウーウさん、どうですか?」


「あ、なんか薄くなった気がするぞ」


ウーウが答える。


「よし!」


シューゴはそこに集中して『神力』を流し続ける。


「おー、小さい穴になった。 うむ。通れそうだ!」


シューゴは何も見えない空間に穴を広げようと意識する。


「くぁーっ!」


パリンッと何かが割れる音がした。


途端に結界が不安定になったせいか、迷宮自体がガタガタと揺れる。


「ウーウさんを、早く!」


シューゴがリーに指示を飛ばす。


「おう!」


リーはウーウの腕を掴んで階段の上に引っ張り上げる。


「そこから離れろっ!」


シューゴが叫ぶ。


「ウーウさん、こっち!」




『体内に眠りし我が神よ。 この結界の穴を塞ぎたまえ!』


『結界』に両手をついたまま、シューゴは強く祈った。

 

いにしえの結界を壊してすみません。 またすぐに元に戻さないといけないんです。 神よ、私の力を全部使ってもいいから直して!」


一際、激しく迷宮が揺れる。


ドサリ


揺れが収まると同時に、シューゴが倒れた。




 それを目にしたリーは、急いでウーウを連れて休憩所に向かう。


「あ、リーさん」「良かった、無事でー」


声を掛けてくる兄弟を無視して叫ぶ。


「ハツーナ神官!。 頼む、起きてくれ!。 シューゴが!」


リーの声にハツーナがテントから出てくる。


「あの、どうしー。 ヒャッ!」


リーはハツーナの腕を掴み、階段まで走った。


「シューゴを助けて!」


「え?」


ハツーナは階段下に倒れているシューゴを見つけた。




 その後、兄弟も駆け付け、シューゴを引き上げて休憩所に運ぶ。


ハツーナが『神力』でシューゴを回復させる。


「う、うぅ」


「シューゴ!」


「良かった、もう大丈夫よ」


緊張していた空気が和らいだ。


「あ、ああ、ありがとうございます」


シューゴはヘラリと笑った。



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