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神力使いの収集屋  作者: さつき けい
第五章 王都到着

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89・神官の仕事


「ありがとうございます。 オレたちは兄弟で西の職業組合から荷物持ちで呼ばれました」


兄の方が重傷なのは弟を庇ったのだろう。


「それで、他の三人は?」


キクマの質問に荷物持ちは首を横に振る。


「この先に行ったっきりで」


「そうか」


キクマは立ち上がる。


通路の先、暗闇の向こうに何かがあるのは確かだ。


「キクマ隊長、リーを連れて行ってください」


止めても行くだろうと、シューゴはリーに護衛を頼む。


「うん」


リーはキクマより先に歩き出す。


得体の知れない気配は危険な匂いがした。




 ガチャガチャと骨の音が聞こえてくる。


通路にはシューゴとハツーナ、まだ動けない荷物持ちが二人。


「ハツーナさん、お二人も、大丈夫ですから動かないで」


シューゴはそう言って三人に触れ、口には出さずに【隠蔽】をかける。


やがて数体の人型骨魔物が姿を見せた。


「ヒィッ」


怯える荷物持ちたちにシューゴはヘラリと笑う。


「大丈夫ですから、静かに、ね」


骨たちはシューゴたちにはまるで気付かずに通り過ぎて行く。


なんならシューゴたちにぶち当たる骨もいたが、まるでただの障害物だというように避けて行った。




「あ、あの、あー、あー」


ハツーナは誓約のためにシューゴの名前を発音出来ない。


「なんなの、あなた」


疑いの目でシューゴを見る。


ハツーナは【隠蔽】については魔道具であり、『神力』だとは思ってもいない。


シューゴが近過ぎて、自分の『神力』と分けて考えられない状態であった。


「私たち収集屋は採取が目的なので、戦闘は無駄なんです。 だから極力避けます」


そのための魔道具持ちだと話す。


「金があればなんでも出来ると?」


ハツーナはシューゴを軽蔑したように睨む。


まるで金持ちや貴族に嫌な目に遭わされた時のように。


「私は依頼を達成出来ればそれでいいんですよ」


シューゴはそんな視線もゆるっと微笑んでかわした。




 暗闇の向こうから戦闘音が聞こえる。


リーたちが骨を叩き砕いているのだ。


静かになるとリーの合図が聞こえた。


「行きましょう」


シューゴは症状の重い兄を抱え、ハツーナは動ける弟に肩を貸して立たせ、ゆっくりと歩く。


やがて闇の先に仄かな明かりが見えた。




 通路を出た所にキクマとリーが待っていた。


「へえ」


シューゴは思わず声が出る。


人が整備したかのような石造りの大きな部屋だ。


キクマがカンテラを掲げると、天井を支える柱がいくつか立っている。


埋もれた遺跡なのか、嫌な気配も、残りの調査員の気配も、その奥にあるようだ。


「奥まで一緒に行くか?」


キクマが荷物持ちの兄弟に訊ねる。


正直、彼らがそこへ行けたとしても役には立たない。


守るべき荷物さえ、もう無いのだ。


兄弟は顔を見合わせて迷っていた。




「提案してもいいですか?」


シューゴはキクマに許可を求める。


「この二人には、ここで待機してもらおうと思います」


「そんな!、置いてくなんて」


予想通り、ハツーナが反対する。


そんな声を無視し、シューゴは御手洗の魔道具を設置し、近くに天幕を張った。


野営用の厚手の毛布を二枚敷いて兄弟を座らせ、休憩を促す。


「この中に魔物は入れません。 安心して休んでください」


先ほど、骨の魔物が通り過ぎたのを見ている兄弟は素直に頷いた。




 そして、シューゴはハツーナを真っ直ぐに見る。


「あなたにもここに残ってもらいます」


と、断言した。


「な、なにを言って」


「この二人には付き添いが必要ですから」


そして、ハツーナになるべく柔らかく微笑む。


「私が女だから馬鹿にしてるのね!。 でも私の『神力』は必ず必要になるわ」


「いいえ」と、シューゴは首を横に振る。


「私の魔道具があれば大丈夫です」


「あ」


ハツーナは言葉に詰まる。


「嫌よ!。 私は師匠から頼まれて、今回の仕事で女性でも役立つとー」


シューゴはハツーナの言葉を遮った。




「同じ『神力使い』でも女性の立場が弱いことは存じています。 しかし、ここであなたは立派に役に立っていますし、この兄弟を癒し、脱出させることもあなたの仕事のはずです」


ここで無理せずとも、まだ仕事は残っている。


未知の危険にわざわざ飛び込む必要はない。


「行きましょう」


シューゴはリーを促し、キクマを先頭に歩き出した。


通路の穴の傍、密かに掛けた【結界】に包まれた天幕に荷物持ち兄弟とハツーナを残して。




 キクマは不安そうに周囲を伺う。


「こんな場所は聞いたことがない」


リーはキョロキョロしながら歩いている。


「どう?、何かいる?」


隣りを歩きながらシューゴが声を掛けると、リーは「まだ」と呟いた。


前を歩いていたキクマが振り返る。


「何かいるのは分かるが、何故かハッキリしないというか、邪魔されている感じだな」


それにはシューゴも頷く。


 確かに魔力の気配を感じるが、この迷宮自体、魔力が濃い。


かなり近付かないと魔物でも確認しにくいのだ。


足音や襲ってくる気配を感じて初めて分かる。




 リーの足が止まった。


人一倍、いや、数倍は魔力の気配には敏感なリーがじっと何かを見つめている。


シューゴも足を止めて周りを見回す。


柱が立ち並ぶ部屋の奥。


「何かいるのか?」


キクマが同じように立ち止まり、目を凝らす。


「竜だ……」


リーの呟きにシューゴは驚き、キクマには聞こえないようにする。


しかし何故、こんな所に竜がいるのか。



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