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神力使いの収集屋  作者: さつき けい
第一章 アヅの街
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8・報告と報酬


 管理官は今回の仕事終了証明書に何かを書き加えてシューゴに渡す。


「後はこちらから組合に連絡する」


「はい、分かりました」


シューゴは軽く頭を下げ、預かっていた鍵を返す。


ゴミの箱は既に定位置に保管してあり、後日回収される。


「蛇の肉はどうしますか?」


気になったので訊ねると「好きにしろ」と言って、管理官は足早に去って行った。

 



「よし、飯でも行くか」


腹ペコのリーが提案する。


「そうだな」


「アンタは文無しだろ?。 たまには俺が奢ってやるよ」


「えっ、リーが?。 珍しいな」


「うるせー。 いつも仕事の時は食べさせてもらってるからな」


「じゃあ、気が変わらないうちに行こう」


二人はリーのお勧めの食堂で早めの夕食を取り、その後に組合への報告に行くことにした。




 組合の受付に二人の組合員資格証と仕事終了証明書を提出。


今日の受付はまだ新人のヒロエ嬢である。


「確認をお願いします」


「はい。 承知いたしました」


今回も二人で協力したので、組合に記録される経験値と報酬はきっちり二等分してもらう。


「はい。 管理官から上乗せが加えられていましたので、そちらも入っています」


報酬と資格証は他人には見られないように、受付の後ろにある衝立ての向こうでの引き渡しになる。


「ありがとうございます」


シューゴたちは受け取るとすぐに懐にしまう。


「お疲れ様でした」


受付嬢に見送られ、二人は建物裏の倉庫に向かった。




「シンゾー爺さん、いるかー」


リーが叫ぶ。


「おう。 なんじゃあ」


「引き取って欲しいものがありまして」


シューゴが小さい方の蛇二体を出すとシンゾー老人は顔を顰めた。


「森林蛇に間違いないが、どこで狩って来た」


「実は地下水路を掃除してたら出て来たんです」


「ふうむ」


シンゾー爺さんもシューゴがたまに小遣い稼ぎに地下水路掃除をやっていることは知っていた。


「管理官には報告したのか」


「はい」


シューゴは頷く。


肉は好きにしていいと言われたことも話す。


「毒蛇の討伐もお前たちの成果だ。 ナナエに報告しておいてやる。 明日の朝、もう一度来い」


「分かりました」


シューゴはシンゾー老人に小さい方の二体を引き取ってもらった。




 その後、リーはお気に入りの宿屋へ。


シューゴは時間も遅いので報酬は使い切らないまま、いつもの空き地に向かった。


今日は神力を使い過ぎたようだ。


【テント】に寝転んだシューゴは、いつの間にかぐっすりと眠りに落ちた。


 翌日、いつもより早く目覚めたが【テント】から出ても子供たちの声は聞こえない。


「そうか。 彼女は娼館か」


昨日の話を思い出す。


最初は下働きでも将来的には客を取ることになるだろう。


女性が娼館に働きに行ったということは、そういうことだ。


「モヤッとするなあ……」


濃い茶色の短い髪、陽に焼けた肌、よく通る声。


彼女の弟たちを見る優しい笑顔を思い出す。




 容姿も年齢も違うが、彼女を見る度に故郷の村にいる母親と重なった。


「捨てて来たくせに。 今さら懐かしく思うなんて」


シューゴには田舎に両親と三人の兄がいる。


家族仲はあまり良くなかった。


家族が今頃どうしているかに興味はないが、それでも母親のことだけはたまに思い出すことがある。


「あのお姉さんを見てると、あんな家族思いの家に生まれたかったって思ってしまうな」


もしかしたら、幼い自分の知らないところで、あの母も彼女のような優しい目で自分たち兄弟を見ていたのだろうか。


知りたくても、もう知ることもない。


またモヤッとしてしまうだけだった。




 シューゴは気持ちを切り替えて組合に向かう。


まだ受付が混み合う時間なので先に裏の倉庫に行く。


「こんにちは、シンゾーさん」


「お、シューゴか」


井戸で顔を洗い、身支度をする。


地下水路を歩き回ったので作業着やブーツを洗いたい。


「昨日の蛇は毒消しの薬になりそうだぞ」


シンゾー老人が教えてくれた。


「それは良かったです」


その分、買い取り価格が上乗せされるようだ。




 シューゴの洗濯が終わる頃にリーがやって来たので、二人で受付に行き報酬を受け取った。


経験値を書き込んでもらうとシューゴの資格証は『青』から『緑』になる。


「昇格おめでとう」


受付のナナエがシューゴに祝福の声を掛けた。


「あ、ありがとうございます」


地下水路清掃に加え、異変の報告。


さらに毒持ちの蛇二体の討伐と薬の素材の提供が重なり、リーと経験値を二等分しても昇格には十分な働きをしたと認められたのである。


「良かったな、シューゴ」


「ありがとう、リー。 そっちもすぐに昇格だと思うよ」




 シューゴは一年ほど前にリーと出会った。


収集屋という仕事を教えるために組んでいたが、いつの間にか相棒兼用心棒になっていた。


最近では、危険な場所での採集にもリーがいてくれるお蔭で助かっている。


経験値の大半が、採集中に討伐した獣やその素材の納品だったことも一度や二度ではない。


昇格もリーのお蔭だとシューゴは思う。


「もしかしたら、リーなら単身の魔獣狩りだけで昇格出来ていたかもな」


「そうかなー」


リー自身はあまり昇格に興味がない。


魔獣討伐は、薬草採集なんかより経験値も報酬もかなり多い。


リーは、収集屋の護衛なぞには勿体無いほど強いのである。



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