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神力使いの収集屋  作者: さつき けい
第五章 王都到着

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73・王都郊外へ


 翌日から、シューゴたちは収集屋としての活動を再開した。


組合の窓口が混み合う午前中は、食料や必要なものを買い込み、最新の情報を集めておく。


シューゴは裏の老夫妻のパン屋にも顔を出して、三日分を買い込んだ。


「あら、収集屋さんだったの」


老婦人は目を丸くする。


「はい。 街の外での活動が多いので、仕事の時はまとめて買いに来ます。 よろしくお願いします」


シューゴはヘラリと笑って、軽く頭を下げる。


「はいはい。 気を付けてね」


「ありがとうございます。 行って来ます」


手を振って店を出た。




 昼過ぎ、リーと合流して人の減った組合に入る。


「まずは掲示板からな」


シューゴは昇格したため『黄』を、リーは念の為『緑』に気になる依頼がないかを確認する。


 しばらくして、離れていたリーがシューゴの傍に戻って来た。


「一応見たけど採集はないな」


いつもの薬草採集は『青』の仕事になるので、特別依頼でない限りシューゴもリーも受けられない。


「そうか。 基本的な薬草採集とか、植生を調べられるものが良かったんだが」


二人にとって王都近郊はまだ未知の領域である。




「シューゴさん、リーさん」


名前を呼ばれて周りを見る。


「今日は仕事探しですか?」


熟練の組合職員マスオルが受付の奥から手を振っていた。


「ええ。 少しでも早く王都に慣れたいですから」


ウンウンと子供を応援するような顔で微笑まれた。


「こちらで何か紹介いたしましょうか?」


掲示板に出ていない案件で、職員が手元に持っているものもあるそうだ。


「いえ、結構です。 自分たちで探しますので」


職員からの直接の依頼というのは、あまり性質たちの良くないものが多い。


大変世話になっておきながら失礼な話ではあるが、コレとソレとは全く違う話である。




「あ、シューゴ。 あれなんかどう?」


リーが近郊の牧場からの依頼を見つけた。


必要資格の色は『緑』で、リーが受注、シューゴが補佐という形になる。


「ああ、それは良いですね。 でも、収集というより捜索に近いですがー」


マスオルさんが詳細の紙を出してくれた。


「北門から出て一日程度歩いた先にある牧場です。 依頼は逃げ出した家畜の保護になります」


「生き物かー」


生物の納品は難しい。




 先日のナキの街のように、危険な魔獣であれば仮死状態で納品しても構わない。


どうせ解体するからだ。


しかし生きたまま捕まえ、依頼人に引き渡すとなると全然違う。


その場合は【収集袋】に入れて持ち帰るなんて出来ないのだ。


中で死んでしまう。


「でも一体か二体ぐらいなら」


「あー」


【収集袋】は必要ないし、二人で抱えて戻ればなんとかなるかもしれない。




「じゃあ、これをお願いします」


マスオルに受け付けを頼み、受注。


「これから向かうのですか?」


「はい、そのつもりです」


目的地には歩いて一日掛かる場合、普通は早朝出発、陽のあるうちに到着の予定を立てる。


しかし、シューゴたちは野営が普通なので問題はない。


午後から出ても、どこかで泊まれば良いだけだ。


「しばらく戻りませんので、貸し部屋の件は戻ってからにしてください」


「あー、はい。 承知いたしました」


マスオルに見送られて北門へと移動した。




 陽が落ちると街道から離れて茂みに入り【テント】を張る。


「今、どの辺り?」


王都周辺は東に穀倉地帯、北に牧草地が広がっていて、西は荒れ地で、その先には魔獣が出る森がある。


西門近くに兵士組合があり、そこから定期的に魔獣狩りが行われていた。


「牧場まではまだ半日歩くが、ここはすでに家畜の牧草地だよ」


あちこちにひづめの跡があった。


「家畜は予想通り羊?」


「そうだろうな」


かなり広い牧場のようで、丈夫な木の柵が続いていた。




 翌朝、目を覚ますと【テント】の周囲に気配がある。


「気配は一人だね」


シューゴが頷くと、リーは、


「俺が囮になって引き離すよ。 シューゴは後からゆっくり来て」


というので任せた。


 サッと出たリーが風の速さで移動する。


リーの高速移動は足が地面から離れているらしく、足音がしない。


どうも用をしたかったらしく、しばらくしてから戻って来た。


「あー、きみ、この辺りの子?」


【テント】の近くにいたのは、七、八歳くらいの女の子だった。


「うん」


「良かった。 お父さんに組合から人が来たって言ってもらえる?」


「分かったー」


女の子が駆け出し、リーはその後ろをついて行く。




 シューゴは自分の食事を済ませ、パンにハムを挟んだリーの朝食を作り、鞄に入れて【テント】を出た。


ゆっくりとリーの後を追う。


やがて牧場主の家や家畜舎が見えてきた。


「おとーさーん」と、女の子の声。


シューゴはようやくリーに追い付き、朝食のパンと水筒を渡す。


「どうしたんだ、ガラ」


家畜舎から中年男性が二人出て来た。


「おきゃくさーんっ」


女の子が抱き付いた方が父親なのだろう。


つまり依頼主ということだ。




「こんにちは、組合から家畜の捜索依頼を受けて来ました」


「捜索?」


もう一人の髭の男性がシューゴたちをジロジロと見ながら訊ねる。


「捜索といっても我々はまだ王都に来て日が浅い収集屋です。 なるべく早く見つける努力はいたしますので、よろしくお願いします」


過度な期待はしないようにお願いする。


「なんだ、収集屋か」


髭の男性は心なしかホッとした顔になった。



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