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神力使いの収集屋  作者: さつき けい
第五章 王都到着

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71・庭を拡張したい


 シューゴが家に戻ると、ちょうどリーたちも帰って来たところだった。


「マスオルさん、リー、お帰りなさい」


「ただいま戻りました」


「おう。 シューゴも出掛けてたのか?」


とりあえず家に入る。


「ああ、裏にパン屋があってさ。 あ、そうだ、マスオルさん。 少しお話しさせて頂いてよろしいですか?」


「はい、なんでしょうか」


マスオルの表情が、心なしか引き攣ったように感じた。




 二階の居室に入ると、リーは【金庫】から食卓と椅子を出す。


「いやあ、あんなに大きなものでも収納出来る魔道具袋をお持ちとは思いませんでした」


マスオルは驚いている。


本来なら、大きな買い物は後で届けてもらうのだが、リーはそのまま【金庫】に入れて持ち帰って来たのだ。


 店でも相当驚かれたらしい。


四人用の食卓テーブルと椅子を一式。


貸し部屋と寝室用にベッドと寝具を五組。


食器は自分たち二人用と客用が三組、それに食器棚。


思い切って鍋など調理用の器具も新調した。


魔道具に見せかけるための鞄を渡しておいてよかった。


「じゃ、俺は荷物の整理をしてくる」


リーは購入してきた家具を各部屋に設置するため、部屋を出て行った。




 シューゴはマスオルに椅子を勧め、座って話をする。


「しかし、あんなに入るとは思いませんでした」


王都でもあれだけ入る魔道具袋は、なかなか手に入らないそうだ。


「まあ、あれはかなり高価でしたから」


「さすがシューゴさんですね」


マスオルはシューゴをかなりの金持ちだと思ったようだ。


ただの浪費癖だとは知らない。


「でも『神力使い』なら似たようなことが出来るのではありませんか?」


シューゴに『神力』を教えたムラトは、穴の開いた袋に物を入れることを『神力使い』の訓練だと教えてくれた。


「そういう噂を聞いたのですが」


かなりぼかして訊ねる。


「確かに訓練にはなりそうですね」


マスオルは苦笑した。


出来たとしても、貴重な『神力』を荷物持ちに使う者はいないという。


「荷物を入れるより、『治療』や『浄化』に使うと思いますよ」


基本的に『神力使い』は教会の治癒師がほとんどだからである。




 そんなことより。


「先ほど庭の手入れをしていたんですが、近隣の家の庭が荒れ放題なのが気になりまして」


「そうですね。 通り沿いならまだしも、この辺りの庭は建物の裏なので人目に付きにくいですから」


外からも、玄関から入っても客には見えない位置にある。


それなら放置しておいて、たまに自分で草を刈る程度でいい。


「えっと、お訊きしたいのは、王都では他の家の庭を借りても良いのか、です」


「はい?」


「つまりですね、出来るなら私に手入れさせてもらえないかとー」


「ふむ」と、マスオルは考える。




「しかし、他から見えない庭の手入れにお金を払う人は少ないと思いますが」


「あ、いえいえ。 私が勝手に手入れをさせてもらうので、お金を払うのはこちらです」


「は?」


「ですから、庭を貸してもらいたいんです」


貸し土地としての庭。


「自分の家と隣接している庭を、自分の庭の延長として使いたいと?」


「そうそう、それです」


シューゴは嬉しそうに頷く。


 マスオルは庭付きの家や農地の売買や賃貸を仲介した経験はあるが、庭単体はない。


しかも、まるで箱庭のような狭い庭である。


それを金を払ってまで手入れしたいという。


「持ち主の方に訊ねてみてもらえませんか」


シューゴは身を乗り出して真剣に訴える。


「は、はあ、分かりました。 訊ねるだけなら」


「ありがとうございます!」


深く感謝の礼を取る。




 シューゴは手に入れたい庭を指定する。


「この家の裏、パン屋さんの裏庭ですね。 それから南側の隣と向かいのそれぞれ三軒」


合計七軒分。


これだけあれば小さな畑に出来る。


「分かりました、組合として出来る事を検討してみます」


「よろしくお願いします」


シューゴは玄関の外までマスオルを見送った。




「終わったぞー」


リーが家具の配置を終えて戻って来る。


「お疲れ様。 夕食にしようか」


「あ、俺、買って来た」


リーが買い物ついでに屋台で買ってきた惣菜を食卓に並べる。


「こっちはパンを買ってあるんだ」


シューゴは裏にある老夫婦のやっているパン屋の話をする。


「へえ」


酒瓶とカップ、パンと屋台料理で王都二日目の夜はけていった。




 翌朝、早くから庭の手入れをするシューゴに、リーは二階の張り出しの手摺りから声を掛ける。


「おーい、そろそろ飯にしようー」


「分かったー」


二人は朝食を食べながら、今後の予定を話し合う。


「散財したしなあ。 仕事も探さないとー」


パンにハムを乗せて齧り付くシューゴ。


「そうだ。 忘れてた」


リーがマスオルから預かっていた革袋をシューゴに渡す。


「昨日の残金だって」


「え、余ったの?」


「そこはマスオルさんがうまくやってくれたみたいだよ」


最低限の生活用品は組合からの補助が受けられるらしい。


「それと、部屋を借りたいって人が来たらよろしくって」


「う、うん」


シューゴは面倒臭いという顔をした。




「じゃ、俺は組合の地下にある訓練所で体を動かしてくるわ」


「ああ。 私はもう少し庭の手入れをしてから、近所を見て回ることにするよ」


シューゴは食器を片付け、リーは立ち上がる。


「いってらっしゃい」


「おう」


二人はそれぞれの生活を始めるのだった。



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