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神力使いの収集屋  作者: さつき けい
第一章 アヅの街
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7・水路の清掃


 やがて、天井部分から水が流れ落ちている場所に出た。


広場の噴水の真下に当たる。


地下も円形に開けた場所になっていて、通路より明るい。


「この辺りは上から落ちて来たものが溜まるから、まずそれを拾う」


「へいへい」


壁の窪みに置いてある掃除道具を取り出す。


網や棒で水に浮いているゴミや沈んでいる誰かの落とし物を掬い、足場に揚げていく。


この場所から物が流れていかないように、細い水路口には網が設置されていた。


そこにも色々と引っかかっている。


集めた物を箱に入れ、それを【洗浄】し【収納】するシューゴ。


「おいおい。 そんなゴミまで洗って持ち帰るのか?」


リーの呆れた声にシューゴはニコリと笑った。


「これも収集の仕事のうちだよ」


ゴミとして管理官に引き渡すのだが、たまに持ち主に戻って感謝されることもあるそうだ。




 ゴミ拾いが終わるとシューゴは本格的な作業に入る。


「リー。 ここで見たことは内緒だよ?」


「あー?。 分かってるよ。 シューゴの力はヤバいから誰も信じないさ」


「アハハハ」


笑い声が水路に響く。


「さて、少し離れてて」


リーは頷き、掃除用具が置いてある窪みに体を押し込んだ。


 それを確認してからシューゴは壁に手を置いて目を閉じる。


『体内に眠りし我が神よ。 我の体を使い、この場を清め賜え』


【洗浄】


シューゴの体から何かが迸り、一瞬、壁や天井、水までがピカッと輝き清掃が完了する。


(やっぱ、コイツは面白え)


リーは心の中で呟いた。




 フゥッと息を吐き、シューゴは目を開く。


一度にいくつもの現象を起こす場合は集中も半端なく必要になる。


普段使いなれた神力では祝詞は使わないシューゴでも声に出したほうが集中できるようだ。


 リーは窪みから出るとシューゴに近寄る。


「終わり?」


「いや、まだだ」


シューゴはこの場所から流れ出る四ヶ所の水路の内、一つに目をやる。


「リー。 あの水路の近くに」


「承知」


リーも何かを感じるらしく、素直に移動した。




 キーキーと遠くから小動物たちの鳴き声が聞こえてくる。


それに混じるように何かの音が近付いて来た。


シャーッ


水路から姿を現したのは大蛇だった。


リーは剣を鞘から抜き、


「これは斬っていいかーっ!?」


と、大声で叫ぶ。


「ああ。 後始末は任せろ」


シューゴが答えた途端、成人男性の二倍以上はある体長の蛇は数個の輪切りになった。


「まだ来るな」


リーは身構える。


「リー!、それ毒蛇だから噛まれないようにしろよ」


シューゴが叫ぶ。


「おっせーよ!」


リーは怒鳴り返しながら、なるべく蛇から離れた。




 シューゴは沈みかけた大蛇を【収納】する。


以前、毒の採取を頼まれたことがある、体の模様が特徴的な蛇だ。


「しかし、なんだってこの蛇が水路に?」


北の森に棲む蛇である。


小動物を狙って入り込んだにしては大きい。


水路の水が川に出る排水口には、外から侵入出来ないように丈夫な鉄柵があるはずだ。


「何かに追われて逃げ込んだか。 それとも追い込まれた?」


管理官に報告しなければならないが、その前に。


「これ、毒抜きしたら食えるのかな?」


大食のリーの何食分だろう。


シューゴはそんなことを考えていた。




 リーが水路の一つを抑えている間に、シューゴは残りの三つの水路を順に清掃していく。


管理官から渡された地図を片手に水路を巡り、本日の作業予定場所のゴミ拾いと【洗浄】を行う。


余計な範囲に使うと後日の仕事が減るので、そこはきちんと区別する。


 三つの水路の清掃を終え、リーの傍に戻って来た。


「リー、どうだ?」


新たな輪切りが二体分増えている。


「ああ。 ご覧の通りさ」


先ほどの大蛇と柄は同じだが、かなり小さい。


シューゴは輪切りを【収集袋】に納め、蛇のいた水路をじっと伺う。




「もう気配はないぞ」


リーの言葉にシューゴは頷く。


「じゃあ、この水路はリーが先頭で行こう」


「分かった」


リーが残り一つの水路へ先に入って行き、シューゴはゴミ拾いをしながら後に続く。


 清掃予定の場所に無事に到着。


シューゴはそこから広場下までの区間に【洗浄】を使う。


天井、壁、そして流れる水までが一瞬輝き、臭いが消えた。


小動物たちはまだ清掃されていない、汚れが残っている水路へと慌ただしく移動して行く。


それを見送った後、シューゴたちは地上へと戻った。




 階段を上り切る前に、シューゴは自分とリーに【清潔】を使い、汚れと臭いを落とす。


広場の鐘が鳴る頃に待ち合わせの場所に向かった。


「待たせたな」


管理官はのんびりとやって来た。


シューゴは人目につかない場所に誘い、簡単に報告する。


「実はこれが排水路に居ました」


大蛇の頭の部分を見せる。


「なんじゃこりゃあ」


管理官は目を剥いて驚く。


「北の森にいる毒蛇らしいぜ」


何故か、リーが偉そうに胸を張る。


「お前がやったのか。 まあ、そうだろうな」


リーの強さは管理官も知っていた。




「分かった。 川の排水口を調べよう。 お前たちはもう手を出すな」


今回は場所が悪い。


街の地下なので一歩間違えば被害は大きくなっていただろう。


本来なら倒す前に報告し、街に討伐の許可をもらう案件である。


「はーい」


リーは褒めてもらえなかったので唇を尖らせる。


子供扱いすると怒るくせに子供っぽい仕草をするリーに、シューゴはクスクスと笑った。



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