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神力使いの収集屋  作者: さつき けい
第三章 山奥の村

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49・山奥の村

第三章はリーと両親の過去編です


全六話に間話が一話と短いですが、よろしくお願いします


 リーはシューゴと別れた後、ひたすら故郷の山を目指した。


この辺りの山々は標高も高く、一年のうち半分くらいは雪が積もっている。


白い息を吐きながら高速で移動。


「チッ。 俺も村の皆みたいに空を飛べたらなあ」


リーが生まれた村はいくつもの山が連なる山脈の中にあり、その村を中心とした里山は人など近寄れない場所にあった。


「親父もよくあんな秘境に辿り着いたもんだ」


リーは飛ぶように走り続け、里への目印となる一際高い木を見つける。




「リー!」


その木の上から声が降ってきた。


「タン!」


ザザザザザーッ


枝を全て折る勢いで何かが木から滑り落ちて来る。


姿を見せたのは真っ白い髪と肌、赤い目をした少年だ。


「あはは。 相変わらずだな、お前は」


「リーこそ!。 もっと早く帰って来いよー」


二人は抱き合い、再会を喜ぶ。




「村の皆は元気?」


「勿論だよ。 繁殖期が近いから落ち着かないけど」


白い少年は大声で笑う。


リーも釣られて笑った。


「さあ、お前の家に行こう。 乗せてってやるよ!」


「悪いな、タン。 俺が飛べないばっかりに」


「気にするな、親友だろ」


リーの目の前で白い少年タンが姿を変えた。




 雪と同じ真っ白な鱗を陽の光に輝かせ、巨大な竜が姿を現す。


リーは、その竜が差し出した腕に飛び乗った。


「さて、行こうか。 十年ぶりの竜族の里へ」


ギャオーッ


と、白竜が遠吠えを一つ。


(飛ぶよ!、捕まって)


「頼む」


バサリッと白い翼を広げて竜が舞い上がった。




 竜族は魔族であり、『魔力』を使う一族。


空を飛ぶのも、竜の姿になったタンの声が耳ではなく頭の中に響いてくるのも、『魔力』を使う魔法の一つだ。


竜族は『魔法使い』の一族なのである。




 竜族は『変身』の魔法を使う。


多くの竜は日頃は単身で行動しているが、繁殖期になると山奥にある里に集まって来る。


(そりゃあ、あんな巨大な竜が何体もいたら、食料なんてすぐ底をつくよな)


とても全員の食料を賄えないので、山間の村の中では人間の姿に近い方が効率が良いとされていた。


そして不足するものは人里から購入し、村には保管する倉庫が発達している。




 やがて、山の奥深くにあるリーの故郷、竜族の村が見えてくる。


(リーが親父さんの命日にも帰って来ないから心配してたんだよ)


リーの親友である白竜は少し怒っていた。


「ごめんごめん。 お金を貯めるのに時間が掛かってさ」


(リー。 まだそんなこと気にしてるの?)


頭の中に響いてくる親友の声が悲しげになる。


「人間だった俺の親父を受け入れてくれた竜族の皆への感謝の気持ちだからね」


竜族の村から少し離れた場所に、風の通り道になっている崖がある。


そのすぐ脇に一軒の家があった。


それがリーが生まれ育った家だ。




 リーは白竜から飛び降りて、家に入る。


家の中は綺麗に整えられていた。


少年の姿に変身したタンがリーを追って入って来る。


「タン、いつもありがとう」


「気にしないで。 リーはいつでも帰って来ていいんだよ」


「いやいや、族長の息子に掃除なんかさせてすまん」


「もう、やめろよー」


タンは竜族の族長の息子である。


族長の一家は、村を中心とする里一帯を守る使命があるため、山を離れることは出来ない。




 テーブルに向かい合って座った。


「タン。 これを持って行ってくれ」


リーは懐から皮袋を取り出す。


「な、なに?」


「俺が稼いだ金だ。 いつものように村のために使ってほしい」


竜族の男たちは村に戻って来る時は家族のために金や食料を持ち帰る。


しかし、リーにはすでに養う家族はいない。


稼いだ金の全てを村に寄付していた。


袋の中身を確かめたタンが目を丸くする。


「すごい大金だ」


リーはニヤリと笑う。


「まだある。 後で村の倉庫に連れて行ってくれ」


リーがひとりで倉庫に行っても中には入れない。


族長一族の魔法が鍵となっているからだ。


「それはいいけど。 荷物は?」


何も持っていないリーに、タンは首を傾げる。


 


「ふっふっふ」


リーが悪い顔で微笑む。


「なんだよ、気味悪いなー」


「実は人間が使う『神力』が使えるようになった」


「えーーーっ!」


タンは椅子を倒して立ち上がる。


リーは体内に竜と同じ『魔力』を持っているが、竜ではないため魔法は使えない。


「ほ、本当か?」


リーはニヤニヤしながら頷く。


「今の仕事の相棒が『神力使い』なんだ。 そいつが教えてくれた」


【金庫】と呟き、リーはタンの目の前で皮袋をいくつも取り出す。


「ヘヘッ」と自慢気に胸を張った。




 シューゴは、元々特殊な力を持つリーなら『神力』と同じ使い方が出来るのでは、と考えた。


お蔭でリーは『魔力』を『神力』と同じように使っている。


「その相棒さんってすごいんだね」


タンは嬉しそうに微笑む。


「リー、良かったな」


親友はリーが良い人に巡り会えたことを喜んでくれた。


「ありがとう、タン。 お前のお蔭だ」




 昔、竜族の里にやって来た人間の男がいた。


人間に変身した竜の娘と恋に落ち、二人の間に赤子が産まれた。


それがリーである。


「母さんは俺のせいで『魔力』を使い過ぎて死んじゃって、父さんは普通の人間だったから短命だった」


寿命が異なる異種族の番(つがい)の宿命である。


リーは人間より成長が遅く、竜に近い。


両親を亡くしたリーの面倒を見てくれたのは、族長の息子であるタンだった。



次回からはリーくんの両親の過去回です

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