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神力使いの収集屋  作者: さつき けい
第一章 アヅの街

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13・あれは噂の


 シューゴは自分たちの仕事を始める。


山の中腹の道を静かになった森の方へと移動。


森と山肌が接触している場所に出る。


「獣の気配が増えてきた。 リー、頼む」


「承知」


森から逃げ出した動物たちの足跡があちこちにある。


こちらに気付いて襲ってくる危険な獣はリーに任せ、シューゴは注意深く、蛇が移動した跡がないかを調べる。


リーは、周りが見えなくなるシューゴの代わりに警戒し、邪魔になるものを排除していく。


「確か、この辺りに鳥の巣がたくさんあったはず」


どうやら蛇たちはそちらに向かったようだ。


 シューゴはリーを呼び寄せ、肩を抱く。


ゆっくり息を吐き【隠蔽】と呟くと二人の気配が消えた。




 シューゴは、軽く凸凹した山肌をよじ登る。


崖を利用して作られた巣穴がいくつか並んでいた。


しかし、昨夜の騒ぎのせいで親鳥たちは巣にはいない。


そのせいで卵や雛を狙って蛇が入り込んでしまっている。


シューゴは、鳥の巣に居る蛇たちを崖下に放り投げて排除し、採集目的の毒蛇だけを仕留めて【収集袋】に入れていく。


人間の腕くらいの大きさばかりなのでシューゴでも対応できた。


やはり収集依頼を受けておいて良かったと思う。


組合のほうでも、シューゴなら毒蛇を集められると期待して『緑』に押し上げてくれたような気がしてきた。


やはり昇級するのは、それなりの責任を背負うことなのだと知る。




「おい、シューゴ」


シューゴが一息入れていると、リーに抑えた声で呼ばれて顔を向ける。


リーは少し離れた場所を指差していた。


そこは崖の底、低木や下草でこんもりとした場所。


よく見えないが大きな洞窟があると聞いた。


確か、大型の魔獣が棲んでいたけど一年以上前に討伐されたんじゃなかったか。


シューゴもリーの側に移動して様子を伺う。




「人間がいる?」


洞窟の入り口付近で、身を隠してはいるが二人の男の姿があった。


中を伺っているのではなく、洞窟の外を警戒しているようだ。


「あの身なりからして噂の盗賊じゃねえか?」


リーの目が輝く。


確かに身に付けているのは兵士崩れの装備のようだ。


シューゴは頷く。




 リーは分かり易い悪人が好きだ。


いつもの酒場の相手と違い、相手に大怪我をさせてしまっても文句は言われないからだ。


街中でも悪意のある事件には首を突っ込みたがる。


でも流石に街の警備兵の仕事は奪えないので、せいぜい捕まえる手助けぐらいである。


「リー。 確証があるまで手は出すなよ」


「わ、分かってるよ」


リーは唇を尖らせた。




 シューゴは【探索】を使う。


洞窟の中を探るとかなりの人数がいる。


「僕たちだけじゃダメだ。 助けを呼ばないと」


「えーー」


リーは不満そうだが、噂の盗賊なら追って来ている私兵や賞金稼ぎがいるはずだ。


そんな者たちまで敵に回す必要はない。


「いいから。 引き上げるぞ」


シューゴとリーは慎重にその場を離れ、急いで来た道を戻って東門から街に入った。




 組合に飛び込む前に、シューゴはリーには酒場へ行ってもらう。


大剣を担いだ大男の私兵を呼んで来てくれるように頼んだのだ。


自分は組合に行き、シンゾー老人を探す。


「ん?、どうした、慌てて」


倉庫内にいた老人はシューゴの珍しい様子に厳しい顔になる。


「すみません、ちょっとお話が。 あー、その前に毒蛇を渡しますね」


シンゾー老人が受け箱を用意する間にシューゴは【収集袋】から数匹の蛇を取り出す。


「ふむ、よくやった。 今朝戻って来た奴らは全員手ぶらだったぞ」


「でしょうね」


昨日は朝早くから行動した者たちはいくらか獲れたらしいが、騒がしい団体が来てからは無駄足になったという。


 シューゴは森での彼らの様子を話す。


「どう見ても採集に来ている態度ではなかったです」


「なるほど」


シンゾー老人は何か考え込んでいた。




「お待たせ」


「失礼する」


リーが大男を連れてやって来た。


「盗賊一味を見つけたというのは本当か!」


「シッ!、静かにしろ」


シンゾー老人が厳しい口調で嗜める。


「ここでは話せん。 シューゴ、リー、一緒に来てくれ。 ああ、お前さんもな」


組合内にいる者たちに聞かれては都合が悪いらしい。


 シューゴたちが黙ってシンゾー老人について行くと、北門の中にある警備隊の詰め所に入って行った。


警備兵たちを押し除けて隊長室に入る。


「どうされました?」


隊長が驚いているが、シューゴたちも驚いている。


冷静なのはシンゾー老人だけだった。


「シューゴ、地図で説明してやってくれ」


「あ、はいっ」


地図を広げて森と山の境を指差す。


「この辺りの洞窟に盗賊たちが隠れているようです」




「ここは覚えている。 かなり手こずったからな」


二年ほど前はこの洞窟に居たのは大蛇だったという。


「毒持ちだからなかなか手が出せなくてね。 今回の毒蛇も同じじゃないかと見ている」


シューゴはクビを傾げた。


それなら真っ先に調べに警備兵が行きそうなものだが。


「前回雇った雇兵たちが『俺たちが倒したことを疑うのか』って言い出してな。 自分たちで調べに行ったはずだが」


シューゴはリーを見た。


「前回の討伐、参加してたか?」


リーは頷く。


「昨夜会った、あの男が頭だった」


「どういうことだ?」


大男が説明を求める。


「つまり、盗賊を匿っている奴がいるんじゃねえかってこった」


シンゾー老人の声が低く響く。



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