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神力使いの収集屋  作者: さつき けい
第七章 王都の生活

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116・迷宮会議


 宰相と側近らしい文官がコソコソと話し合う。


「お前たちが迷宮を調査したいという話は聞いている。 内容は実に興味深いし、国の利益にもなる」


文官としては調査は許可したい。


しかし、シューゴの依頼書によれば、今までのような十階の魔力石を確認するだけの調査ではない。


少なくとも十日以上は地下に滞在し、他にも巨大な魔力石がないか、死体から魔力石が採れる魔物がどの程度いるのかの調査である。


「そのような調査にルルレーシアを同行させるわけにはいかない。 代わりに軍か騎士団から、お前たちの監視を送り込む事になるが、それは構わないか?」


宰相としては当然の提案だ。


「勿論です。 危険な任務になりますので」


シューゴも頷く。




「嫌です!、わたくしも参加いたしますわ!」


ルルレーシアは立ち上がって叫ぶが、当然、宰相の言葉は覆らない。


地下迷宮の未知の領域の調査である。


今までの調査とはわけが違う。


そんなところへ十日以上も胡散臭い男たちと一緒に娘を行かせる親はいない。


「彼らが無事に戻ったら再調査として迷宮に入ることを許可する。 それまではおとなしくしていなさい」


宰相である父親に嗜められ、ルルレーシアは悔し気ではあるが、一応納得して座った。




「実はな。 以前から、お前たち二人が迷宮に入るなら同行したいという希望者がいるのだ」


「へえー」


シューゴとリーは思わず顔を見合わせた。


「それと、騎士団から一人同行させたい。 前回、助けられた騎士カーマルーだ」


彼はルルレーシアの幼馴染で、ある貴族家の子息。


宴で主賓であるシューゴに剣を向け、ルルレーシアの護衛騎士を解雇されていた。


現在は、ただの王宮騎士団の警備騎士の一人である。


「本人の強い希望でな。 挽回の機会を与える事になった」


シューゴは無表情だが、リーは明らかに邪魔臭いという気持ちが顔に出る。


「それでは、我々二人と国から希望者二名、ということでよろしいですか?」


シューゴが確認すると宰相は頷いた。


「日程は近いうちに通知する。準備はしておけ」


「承知いたしました」


シューゴたちは立ち上がり、礼を取る。




 もう話は終わったと退室する気満々だった。


「まあ、待て」


これまで黙って聞いていた組合長が口を開く。


「今後の話を詰めておきませんとな、宰相閣下」


威圧を込めた目でギロリと宰相を睨む。


「これは組合からの依頼ということでよろしいか?」


組合長はシューゴが提出した依頼書の本通を取り出す。


文官の手元にあるのは写しである。


「いいや、国からの依頼に修正してもらわねばならん」


地下迷宮は王宮内にあるので、国の管理下にある。


これまで王族以外が調査をしたことはなく、組合や軍からの参加者は、あくまでも護衛など調査以外の仕事を担当させてきた。


「ほお。 では正式な依頼書を作成して頂く必要がございますな。 報酬、期間の延長の場合の上乗せ、死亡や重症者の補償。 準備に関しても、どちらが用意するのか明記して頂きます」


文官の顔が青くなった。




 シューゴが組合に提出した依頼書はすでに完璧だった。


王宮側もそれを確認したから話が早く進んでいる。


しかし、これを国として新たに依頼する形にすると、内容がかなり変わる事になるのは避けられない。


「どうした。 この様式で同じ依頼書を作成すればよいのだろう?」


宰相が文官に訊ねるが、返答は鈍い。


「い、いえ、閣下。 庶民が作成したものと国からの依頼では全く異なりますので」


身内に甘い行政府の役人に、シューゴほどの文書が作れるかは疑問だった。


作成者の名前を変更するだけでなく、国が用意する薬や食料も、立場上、それなりのものに変更しなければならない。


「この日数となりますと、今ご用意しているものでは足りないかと」


今からでは準備に何日かかるか分からない。


「どうしろというのだ」


宰相は組合長を睨む。




 組合長の口元が歪んで笑みを浮かべた。


「今回は組合からの依頼を特例として承認頂けますと幸いでございます」


宰相は文官の様子を見て、渋々頷く。


「その上で、今回の調査での成果に納得されましたら、次回からは組合の依頼も受けて頂けるようにご検討ください」


組合長は、わざと大袈裟に礼を取る。


魔力石は国に買い取られる事は決まっているが、その収集や魔獣狩りについては組合から仕事として受注出来る。  


つまり、組合長の狙いは人々の仕事を増やすことだ。


王宮内に組合の窓口を設置し、今まで貴族や特定の商人にしか出来なかった仕事を受注する。


それをシューゴたちに無理を通す代償とした。


宰相は眉間に皺を寄せて唸る。


「分かった。 だが、それらは全て此奴こやつらの成果を見てからだぞ」


組合長がニヤリと笑う。


「勿論ですじゃ。 文官殿、この約束も文書に記載して頂けますかな」


「は、はい」


「それでは」と、ようやく組合長が立ち上がる。


シューゴとリーがそれに続き、きちんと礼をとって退室した。




 組合まで馬車で送ってもらう。


「なんだか大ごとになりましたねー」


シューゴは軽い口調で話す。


「ふんっ、毎度王宮のやり方は気に食わなかったからの。 少しぐらい意趣返しもよかろう。 なんにせよ、お前さんたちの結果次第じゃ」


「承知しました」


「がんばるよ」


シューゴたちの軽い返事に、組合長は少し不安になった。



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