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神力使いの収集屋  作者: さつき けい
第七章 王都の生活

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113・留守の心配


 リーたちが訓練を終えて受付に戻ると、マスオルが待っていた。


「お疲れ様です。 こちら、ご用意しておきました」


エリエが護衛依頼の報酬と資格証を受け取る。


資格証は『黄』だ。


「どうも」


 組合の資格証の色は、仕事の熟練度により下から『青』、『緑』、『黄』、『赤』、『黒』となっており、チエルは『青』、エリエはシューゴと同じ『黄』である。


ちなみにリーは現在『赤』だ。


あれから二年の間、迷宮調査で一緒だった雇兵キクマや西の組合からの依頼で何回か魔獣狩りに参加している。


戦闘系の仕事は経験値が上がり易く、あっという間に昇級。


『赤』は単身でも魔獣狩りが出来る資格だ。




「リーさんにはこちらを」


マスオルから渡されたのは王宮からの手紙である。


「俺じゃなく、シューゴに渡して」


リーは邪魔臭いので受け取りを拒否する。


「それがー」


先ほど一緒だったはずのチエルだけが来て、報酬や確認書類を受け取って行ったそうだ。


つまり、シューゴは姿を見せずに先に帰ったらしい。


「ですので、リーさんからシューゴさんにお渡しをお願いします」


どうせ中身にはリーの名前もあるはずだ。


「ハァー。 分かりましたよ」


リーは仕方なく受け取ると裏口から外に出た。


「それ、なに?」


歩きながらエリエが訊ねる。


「国からの仕事の依頼」


そろそろ今年の迷宮調査の時期だ。


「国からなんて、すごいな」


エリエは素直に感心している。


「受けるかどうかはシューゴが決めるから、俺はそれに付き合うだけさ」


家に着くと、それぞれの部屋に分かれた。




 二階の自宅に入ると、シューゴは夕飯の準備をしている。


「マスオルさんから預かった」


リーはシューゴに手紙を渡す。


「あー」


おそらく分かっていて避けたのだろう。


 シューゴは先日、王宮の調査役人ルルレーシアに呼び出されていた。


二年前の救助以来、かなり気に入られているようで、魔道具や魔力石の件でたまに相談を受けている。


「今年も断るのか?」


リーは、迷宮はまだまだ未知の領域なので興味はある。


結界さえ無事に通れるなら問題ない。


「んー」


シューゴはいつも通り、あまり乗り気ではないようだ。


「トォモルさんからも頼まれたよ」


リーは今日、訓練場で会ったと話す。


「そーだなー。 とりあえず、明日、組合に行って相談するよ」


迷宮自体はシューゴも嫌ではないらしい。




 それでも、すぐに承諾出来ない理由がある。


「チエルさんたちのこと?」


食卓用テーブルに皿を並べていたシューゴが一瞬、止まった。


チエルとエリエは、今日は自分たちの部屋で夕食をとっている。


「そうだね、まだ王都に来たばかりだし。 もう少し様子を見ないとなんとも言えないけど」


シューゴの目線が泳ぐ。


「気になって長期間留守に出来ないってか」


リーが揶揄い気味に訊く。


「あ、いや、そういうわけでは」


シューゴは留守にするなら、ある程度の不安は解消しておきたいのが本音だ。


何かあってからでは遅い。




 翌朝、チエルは昨日と同じようにシューゴの手伝いに庭に出て来た。


「無理しなくていいんだよ?」


シューゴは、彼女が手伝いたいと言ってくれるのはありがたいが、若い女性に土いじりは難しいのではないかと思っている。


「私、なんでもやってみたいんです」


シューゴへの恩返しになるなら何でもする。


そのために王都に来たと笑う。




「そう。 じゃあ、少し頼めるかな」


シューゴの庭は野菜や薬草の他に果樹を栽培している。


それらの収穫が近い。


「果実は熟したものを取り込んで干し果物にするんだ。 後で作り方を書いた紙を渡すよ」


「ありがとう。 でも自分でやらないの?」


「うーん。 近々、仕事が入るかもしれないので、できれば任せたいかな」


最近は三階の三人組も忙しくなり、泊まりの仕事も増えていた。


女性二人だけを家に残すのも不安要素だ。


 しかし、チエルは目を輝かせる。


「なんでも言いつけて!」


役に立ちたいと笑顔で迫ってくる。


「あはは、とりあえず朝食にしよう」


二人は二階に上がった。




 リーとエリエを交えて食事にする。


家にいる時は、なるべく朝食は一緒にとることにした。


シューゴはパンが山盛りになった籠を食卓の真ん中に置く。


エリエはリーと奪い合うように食べていた。


「コレ、めちゃくちゃ美味いな!」


裏の老夫婦のパン屋が近いお陰で、焼き立てが買える。


「それにミルクやバターやチーズも新鮮で美味しいわ」


チエルも目を輝かせている。


「乳製品は仕事で知り合った牧場兼農場から直接購入しているからね」


そこの娘であるガラがよく遊びに来るので、そのうち紹介するつもりだ。


野菜は庭で採れたもので、果物も添えた。




「今日の予定を訊いても?」


シューゴは食後の白湯を出す。


「私たちは少し王都のことを勉強しようと思うの」


チエルは昨日、マスオルから、


「色々と教えましょうか?」


と、誘われたそうで、組合が空いている時間に行くらしい。


「へ、え」


悪い予感がしてシューゴは渋い顔になる。




 午後近くになって、四人で組合に出掛ける。


チエルたちをマスオルに任せ、シューゴとリーは二階の組合長の部屋へ向かった。


「迷宮調査、受けてくれるか」


老組合長はニコニコしている。


「条件がございます」


シューゴはいつも通り、ヘラリと笑う。


「な、なんだね」


急に組合長の顔が強張った。



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