106・王都の生活
第七章の開始です
今回は31話と間話の合計32話になります
よろしくお願いします
シューゴたちがアヅの街を出て、約二年が過ぎた。
今のシューゴは、稾色の髪を肩の下まで伸ばして無造作に一つに結び、前髪は細い垂れ目を隠している。
今年で二十一歳のはずだが、ヘラヘラとした笑みと妙に落ち着いた物言いが年齢のわりに老けていた。
年齢が不詳なのは相棒のリーも同じで、相変わらず童顔で小柄。
黒髪にクリッとした大きな黒い瞳は二年前と全く変わっていない。
二人は相変わらず『収集屋』として働いている。
前に組合から頼まれて王宮の地下迷宮に入ってから知名度は徐々に上がっているらしい。
しかしながら、評価は微妙なとこだ。
あれからリーは竜の里へ出掛けていることが多くなり、シューゴは護衛がいない時は家に籠っている。
つまり、二人の姿を見た者があまりいないのだ。
特にシューゴはヒョロリと背が高く、薄い髪色も目立つ。
たまに東の組合に姿を見せると注目されるようになってしまった。
シューゴは考える。
「王宮からもらった報酬の残りもあるし、引き篭もるか」
ハツーナ神官が報酬のほとんどを教会の修復に充てたが、それでも不足した分をシューゴが黙って補填した。
その工事も先日、開始から約一年で完了。
支払いも終わった。
金額はマスオルに任せていたが、戻って来た差額は半年は遊んで暮らせる額だった。
「これなら、しばらく仕事しなくてもいいな」
というわけで。
シューゴは、組合に薬草採取の依頼を出し、自分は家で薬の研究と、庭で好きな植物を育てることにしたのである。
実は、また王宮の地下迷宮調査の打診が来ていた。
シューゴが断ったので他の者が調査に行き、それが終わって数日後、何故か王宮に呼び出される。
「聞いたわよ。 洗面台付き御手洗やら、特別製の干し果物があったなんて知らなかったわよ」
と、ルルレーシアからの苦情だった。
どうやら、今回の迷宮調査に参加したハツーナから聞き出したらしい。
今年も姫の我が儘は酷かったようで、次回は辞退者が出るという噂だ。
(しかし、何故こんな姫が迷宮調査してるんだ)
と思っていたら、組合長が教えてくれた。
「代々王族が調査をしておってな。 前任者は王弟殿下、つまり姫の御父上だ」
一人娘が引き継いだという事である。
ため息が出た。
「マスオルさんから手紙を預かって来ましたよー」
引き篭もっていても組合から連絡は来る。
「ああ。 ありがとう、ロウ」
貸し部屋の三人組は外との連絡係になってくれていた。
「二日後にリーと一緒に来て欲しい、か」
王都と竜族の里を往復しているリーは、明日には戻る。
マスオルはちゃんとその辺りも把握していた。
「承知した」と伝えてもらう。
翌日、リーが戻って来て、迷宮から救出した風竜ウーウの近況を教えてくれる。
彼女はまだ目が不自由なままだが、ずいぶんと体調は良くなったという。
そして、無事に竜の卵は孵った。
父の青竜によく似た美しい青の鱗を持つ子竜は、ソウラという名前がついたそうだ。
「もう可愛くて可愛くて」
リーはデレデレである。
だから頻繁に通っているのだ。
子竜はすでにリーより大きいらしい。
「んー。 でも可愛い!。 もう少し大きくなって変化の魔法を覚えたら、王都に遊びに連れて行くって約束したんだ」
「ほお」
魔族である竜は魔力が高く、幼い頃から魔法を習得し始める。
変化の魔法は早ければ七歳くらいで覚えるそうだ。
「シューゴにも会いたがってたよ」
卵だったから覚えてはいないのだろうが、母竜からは命の恩人だと聞いているそうだ。
「あはは、それは楽しみだな」
シューゴにとっては、あの大きな卵からどんな竜が生まれたのか、気になるところではある。
「シューゴさん、リーさん、今日もお願いします」
東組合のマスオルに呼び出され組合に行くと、すぐに捕まってしまう。
「はあ。 今日もですかー」
最近何故か、資格証『青』の新人たちの指導を頼まれる。
「こういうのは組合の職員の仕事では?」
「ええ、ええ。 シューゴさんたちはもう職員みたいなものですから」
「は?」
シューゴたちにそんなつもりはない。
だが、色々と無理を通してくれるマスオルを無下には出来ないので、出来る限り協力はしている。
つまり、シューゴとリーは組合からの依頼で初心者の指導していた。
シューゴは薬草や小動物など、基本的な採集の仕方を指導。
以前、自分で採集出来なくなった時に新人に教えたことがきっかけで、組合から指導を頼まれるようになった。
組合の二階にある空き部屋で打ち合わせした後、実際に東門から外へ。
すぐ近くの森の浅い場所で実際に採取しながら教えている。
リーは剣術の指導をさせられていた。
以前、三人組のひとり、サンタンに頼まれて地下の訓練所で相手をしていたら見物人が集まってしまった。
その中から「自分も教えてほしい」と組合に依頼した者がいて、そこから剣術指導が始まったのだ。
勿論、収集屋の仕事とは別だが、組合からの依頼の仕事は経験値も報酬も破格であり、お陰で生活には困らない。
その日の夕方。
「ありがとうございました」
「がんばってね」
シューゴは引率してきた新人たちと受付前で別れる。
そろそろリーも終わる頃だろうと待っていると、組合の表の扉が開く。
「えっ」
シューゴは動揺する。
見覚えのある女性の姿があった。




