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神力使いの収集屋  作者: さつき けい
第六章 王宮との関わり

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105・間話 噂の真偽

今回の間話はチエル回です



 王宮の地下迷宮の話は様々な方向に改変され、王都中に溢れた。


しかも、その一部は王都を離れ、徐々に遠方へと流れて行った。


遥か遠いアヅの街の職業組合にも、一年後くらいにその話は流れて来ている。


「これ、本当かしら」


受付嬢ナナエは組合本部から流れてきた通信文を読んでいたが、その顔には疑問符が浮かんでいた。




「こんにちは、ナナエさん」


「あら、チエルさん、エリエさん、 ご苦労様」


シューゴたちがこの街を去ってから二年以上が経過した。


チエルの弟は、シューゴの残した指南書を参考に友人たちと一緒に収集の仕事をしている。


チエルはそんな弟を手伝うため、家事の合間に時折り組合を訪れていた。


 受付のナナエはチエルや弟たちだけで街の外に出るのは心配だと、組合長に護衛を付けるように提案。


「そうだな、あのシューゴの後継者だ。 大切にしないとな」


それで選ばれたのが、当時、他国から来たばかりだった元傭兵の女性エリエである。


褐色の肌に波打つ黒髪を一つに束ね、長剣を腰にく筋肉質の女戦士。


チエル姉弟とエリエはすでに一年近く組んでおり、相性は良い。




「ただいま戻りました。 薬草は倉庫へ運んでおきました」


チエルは倉庫で受け取った納品証明をナナエに渡す。


「ありがとう。 いつも助かるわ」


「い、いえ。 私は弟の手伝いをしているだけですから」


ナナエは、チエルが持ち込んだ薬草の精算をし、報酬の入った小袋と一緒に『青』の資格証を返した。


 受付の奥で組合の職員たちが一枚の紙を覗き込んでいる。


「何かあったんですか?」


「あー。 職業組合は魔法具で各地の組合と繋がっているんだけど」


そのため、登録している求職者たちの情報がどこの街でも確認出来るようになっている。


「これは通信文って言ってね。 たまにアヅの街出身者が他の街で活躍したり失敗したりすると送られてくるのよ」


ナナエはため息を吐く。


「さっき王都の組合から流れてきた情報なんだけど、仕事をした人の名前がないの」


アヅの関係者だというが名前がなければ分からない。


王都と聞いて、チエルの胸がザワついた。




 普通は各自の資格証を元に職業組合に経験値や報酬が記録され、熟練度に応じて組合から仕事が紹介される。


その個人が特定されなければ、組合に記録が残らず昇格に影響が出るのだ。


「その方は何したんですか?」


「王都にある地下迷宮で人助けをしたようよ」


ほとんどの者は王都に地下迷宮があることさえ知らない。


「へー」とエリエが目を輝かせた。


「そんな大変な仕事に名前がなかったら大損じゃないですかー」


チエルは同情しているようだ。


「たまにあることさ」


倉庫担当のシンゾー老人が口を挟む。


「シンゾーさん、どういうことですか?」


ナナエは首を傾げる。




 シンゾーは受付にどかりと座り、通信文を手に取る。


「組合からの報酬や経験値は入らねえが。 ほら、これは王宮の仕事だろ?」


王都の地下迷宮は王宮が管理しており、許可がなければ入れない。


「つまりな。 王宮からたんまり報酬が出るのさ」


依頼した者が貴族だったり富豪だったりすると、仕事をしてくれた者を取り込む目的で破格の報酬を約束し、終身雇用することもあるという。


だから組合に記録を残さなくても良いらしい。


「あー、なるほど。 金持ちに雇われた方がいいもんね」


エリエが頷いた。




「しかし、こりゃあ……」


シンゾーの顔が険しくなる。


「なんで職業が書いてないんだ?」


「えっ」


皆が改めて通信文を読む。


『救助隊は四名。 隊長は王都西職業組合推薦の雇兵キクマ。 王都中央教会から神官ハツーナ。 他に王都東職業組合から二名』


そこへ、アヅの街の職業組合長もやって来た。


「おーい、お前ら、仕事しろ」


「あ、組合長。 これ、おかしくないです?」


ナナエが代表して組合長に通信文を見せる。


ここは職業組合なのに、職業の明記がない。


「ああ、これね。 他二名ってのは荷物持ちだったらしいよ。 なんでも若いくせに結構な魔道具持ちだったから東組合が推薦したんだとさ」


「魔道具?」


ナナエたち職員の頭にはひとりの青年の顔が浮かんだ。




 組合長が「ふむ」と手を顎に当てる。


「シューゴくんなら有り得るな」


名前を出した途端、組合長は皆に睨まれる。


「シューゴさん、なんですか?」


チエルが目を見開いて組合長を見ていた。


「あ、いやいや、違うかもー」


慌てて発言を取り消す。


みるみるうちに涙が溢れるチエルを見て、皆、口を閉ざした。


 シューゴがいなくなったことを知った時、チエルは周りが心配するほど沈み込んだ。


娼館から救い出され、成就するはずだった恋。


女性なら誰もが憧れた話が悲しい結末を迎え、街中が彼女を憐れむことになった。


最近、やっとそれを忘れて明るくなってきたばかりだったのに。


 チエルは黙って組合を出て行く。


「どうしたんだ、チエル」


エリエは後を追った。




 エリエが追いついた時、チエルは小さな空き地で小岩に腰掛けたままボーッとしていた。


「チエル。 もしかして、さっきの話に出てきた収集屋って」


「うん。 前に話した王都に行っちゃった人だよ。 元気そうで、良かった……」


エリエは、ただ涙を流すチエルを軽く抱き締める。


「いつも話を聞いてて、アンタがそいつを好きだったのは分かってたよ。 泣くほど好きだとは思わなかったけどさ」


「う……ううっ」


チエルの嗚咽を聞きながら、エリエはだんだん腹が立ってきた。


「何グジグジしてんだ、チエル。 二年以上も前の話だろ?。 どうしたらもう泣かなくて済むのか、考えたらどうなんだい」


チエルが顔を上げる。 


「……会いたい」


エリエがウンウンと頷く。


「助けてもらってばかりだったから、少しでも恩返ししたいの」


「そかそか。 じゃ、決まったな!」


「え?」


チエルが驚いてエリエを見ると、褐色の肌の女兵士はニコッと微笑んだ。



これで第六章は終了です


第七章の書き溜め終了まで、またしばらくお時間をいただきます

よろしくお願いします



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