第三話
おにおんぐらたんさんは、剣士のようである。剣士は接近戦を専門としているので、使える武器が豊富である。おにおんぐらたんさんの武器は片手斧。ミノタウロスの見た目に対して似合い過ぎている。
「おにおんぐらたんさんは、剣士ですよね? 前衛をお任せしてもいいですか? 私は戦闘は出来ないことはないのですが、苦手なので僧侶にしたのです」
「え? あ、ああ。いいですよ」
動揺しているようだ。初めてというからには、戦ったことがないのかな? 疑問に思い聞いてみる。
「まだ、戦ったことってないのですかね?」
「いえ、あります! 大丈夫です! 任せて下さい!」
力強い返事が来た。私の可愛いアバターを見て、いい所を見せたいのかもしれない。ネットゲームの不思議だが、アバターが可愛いと現実世界のプレイヤーも可愛い子と思われるからね。王子様に守って貰うお姫様になった気分だ。
そして、再びモンスターが現れる。今度は岩の鎧を纏ったイノシシである。
おにおんぐらたんさんが、イノシシに攻撃を仕掛ける。振り上げた斧は、イノシシを真っ二つにした。
(いやいや、まだお互いにこのゲームの初心者なんだから、この攻撃力は強すぎない? アバターに強さの補正とかないよね?)
だが、この強さは正直ありがたい。初心者だというのにこれだけの強さがあるのならば、知らずにモンスターに何度も突っ込んで行ったのかもしれない。よく死にませんでしたね? 心の中でそう思いつつも先に進む。
戦いながら強さを上げていくのは当然だが、目指すは次の街。
何度も戦った。おにおんぐらたんさんが前衛でも心配はなかった。だが、山岳地帯で足場が悪くなかなか進まない。ひとまず《鉱山都市メタルフォール》に戻り、休憩を取ることにした。
気分転換に街中を散策する。酒場に入り食事を摂る。おにおんぐらたんさんは、エールを注文していた。ゲームの世界だから酔いはしないけど、お酒を頼む時点でこの人も社会人かな? と思い遠回しに聞いてみた。
「おにおんグラタンさんは、ログイン時間は何時くらいになりますかね?」
「僕ですか? そうですね。日中は仕事があるので、夕食食べた後にログインします」
「そうなのですね。私も仕事から帰ってから、食事をしてログインするので、プレイ時間が同じくらいで良かったです」
食事をしながら相談するが、次の街まで今日はいけそうもないので、狩りをするだけにした。




