第十五話
仕事が終わり、家に帰るための電車に揺られている。するとLINEに通知が届く
――今、仕事が終わりました。今日は残業がないのでログインできます。
この一文を見て気づいた。どうやらこの前ログイン出来なかったのは、残業のせいであると。この後、おにおんぐらたんさんを独占して、二人で遊ぶことを想像すると、思わず顔がにやける。はっと周りの視線を気にして、にやけ顔からすまし顔にして、平静を装う。
そして、こちらも返信する。
――私も今、帰りの電車の中です。
他愛無いやり取りだが、なんとなく甘酸っぱさを感じて内心身悶える。そして家に帰りついた。部屋着に着替えて夕食を食べる。するとまた通知が来た。
――今、家に着きました。
仕事の終わりから、家に帰宅するまでの時間が私と同じくらいのようだ。そうすると近所に住んでいるとか? いや、それは都合よすぎだな。私の家と反対方向かもしれない。いや、お互いにネットの中の住人なのだから、そもそも住んでいる都道府県が違っているかもしれない。
食べ終わった食器を両手でテーブルの前方の空きスペースへとどける。そして、そのまま頬をテーブルに乗せた。ひんやりと無機質な温度が伝わってくる。
(会える距離の人だといいのにな……いや、まだ異性とも確定してないし!)
邪な考えではあるが、恋人が欲しい。大学時代の友達とかは、既に恋人がいて私だけ取り残されている。それが焦燥感となっている。
がばっと顔を上げて気を取り直す。食器を洗い終えると、早速ベッドに向かって白いヘッドギアを手にする。白いヘッドギアが思わず天使のように見えて願掛けをしてしまう。
(恋人が出来ますように! 出来れば優しい人で! いや、出来ればではなく必須で!)
そしてヘッドギアを被って、ゲームにログインした。
宿屋に着くと早速フレンドメッセージを確認する。何も届いていない。恐らくおにおんぐらたんさんも夕食を食べているのだろう。なんとなく夕食の光景が想像出来てしまう。玉ねぎだらけの食事をしていそうな気がする。玉ねぎ大使だ。
狩りをするには時間が半端なので、街中をぶらついた。すると、アクセサリーショップが目についた。ピンク色の魔石がついたネックレスに目が奪われた。ピンク色の魔石は綺麗な光沢で輝いている。タグを見ると『防御力上昇』と書いてあった。私は防御力が低めだし、それにネックレスをつけていたらおにおんぐらたんさんが褒めてくれるかな? と期待してしまう。悩む必要なく買い一択であった。
買ってそれを手に取り目を輝かせていると、背後から声をかけられた。
「お嬢さん、つけて差しあげましょうか?」
驚いて後ろを振りむく。そこには牛男がいた。台詞とのギャップに思わず吹き出してしまった。
「あー、折角かっこいいセリフを言ったのに、なんで笑うんですか」
笑われるのが意外そうなので、その理由を説明してあげる。
「いや、見た目と台詞とのギャップですよ。台詞はかっこよかったですけど、見た目がミノタウロスですから。イケメンだったら決まっていたのですけどね」
ムーッと牛男が顔をしかめている……ように感じるだけだが。でも、ギャップの違いが可愛らしく思えてしまう。私は台詞の返事をした。
「おにおんぐらたんさん、ネックレスをはめてくれませんか?」
ネックレスをおにおんぐらたんさんに手渡して、私はくるりと背を向けて首の後ろを見せる。するとおにおんぐらたんさんは、ネックレスをつけてくれた。つけ終わりを確認すると、またくるりと回り、おにおんぐらたんさんの顔を見て聞いてみる。
「……どうですか? 似合っていますか?」
すると、優しい笑顔で答えてくれる。
「ええ、とてもよくお似合いですよ。お姫様のようです」
やはりどうしてもギャップを感じる。私は顔を背けて笑いをこらえた。
笑いに耐えきった後、気を取り直して早速今日の目的を告げる。
「今日こそは、港町に辿り着きましょう。山岳エリアの港町ではなく、雪原エリアの港町に向かいます」
「了解」
そして、私達は街を出た。




