第十話
朝起きて顔を洗った。さっぱりとしたところで朝食を食べる。そして食事を終えると歯磨きをして急いで服に着替える。仕事をしに会社へ行く準備である。満員電車に揺られながら会社に辿り着くと、早速仕事に取り掛かる。頭の中がゲームのことを考えながら仕事をしていたせいか、あっという間にお昼休みになった。
うちの会社には小さめだが食堂がある。いつも私は夜ゲームに夢中になってしまうので、朝が弱くお弁当を作る余裕がない。安くて美味しい食堂があることはありがたい。唐揚げ定食を選び、空いてる席に座り食べ始める。
すると、後ろに座っている男性たちの話声が聞こえてきた。
「エターナル・リルミナが買えなかったよ」
「そうなのか? 俺は買えたぞ」
「マジ? いいなー。どこまで行った?」
「まだスタート地点だよ。砂漠エリアの《カルディリ》。暑いしだだっ広いし、歩くのがしんどいよ。本当に身体が疲労するわけじゃないからまだいいけど」
どうやら後ろの人もプレイしているようだ。こっそりと誰なのか確認するために後ろを覗いてみる。うん、他の部署の人だから知らない人だ。知っている人でも一緒にゲームをするのは、勘弁してほしいと思う。仕事もプライベートもずっと一緒だと、ゲームでストレス発散にもならない。
それにしても砂漠エリアを選ぶとは、なかなかのガチ勢かな? 初心者とかなら進みやすい草原エリアを選びそうではあるが。
ふと牛男を思い出す。たまに世の中狭いな? と思うような出来事があるので、ひょっとしたら同じ会社にいる人の可能性もあるかもしれない。思わず辺りを見渡してしまう。当然牛男の姿をする者はいないが、この中でエターナル・リルミナをやっている人が他にもいるかもしれない。ひょっとしたらいたりして。
頭の中でそんなことあるわけないかと考えつつ食事を終えた。
午後の仕事を終えると、急いで家に帰る。部屋着に着替えて夕食を作り食べる。そして食べ終えると早速ベッドに横になり、白いヘッドギアを頭に被ってエターナル・リルミナにログインした。
セーブしていた宿屋に出た。辺りを見渡すが、牛男の姿は見えない。ちょっと寂しさを感じつつ、仕方なく街の近辺で狩りをする。遠くに行くとはぐれかねない。
前衛がいないから、控えめに戦う。だが、なかなかおにおんぐらたんさんがログインしてこない。仕事が忙しいのかな? こんなことならリアルの連絡先を聞いておくべきだったかな? 寂しさを感じつつ一人で地味に狩りをした。
そして、結局この日はログインしてこなかった。
『もしかしてこのゲームに飽きてやめてしまったのだろうか……』
そんな不安が頭の中をよぎり、寝る時もベッドの中で悶々と考えていた。




