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DUNGEONERS:LIFEPATH  作者: 澁谷晴
3: Bouleau The Wheeler
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第94話 紛れ込み

 菜園の魔女の領地もまた、多層構造だ。上部にはさんさんと人造の陽光が降り注ぐ広大な畑、そして対比的に光の当たらぬ箇所も存在する。大狼の魔物スコルの残した〈疵〉の一つだ。


 ブロウは薄汚れた廃墟の中で、武装した悪漢たちに囲まれていた。彼らは〈盗賊〉や〈殺人者〉など、後ろ暗い役割(ロール)を与えられた者たちだ。完全な無法者ではなく、領主によって泳がされているのだ。犯罪者の捕縛や処刑という、官吏の役割を果たすためだ。また、彼らの役割に似合った、汚れ仕事を任せることもあった。このフォルディアでは全ての人々が、己の役割を果たして生きていける――立つ場所が暗がりか明るみかという違いはあるが。


 荷車に魔剣を二振りも搭載してのこのこ(・・・・)と出現したブロウは格好の獲物であり、お決まりの脅し文句と共に略奪者は取り囲む。自分はラップローヴの保有者として定義され固定されているので、渡すことは不可能だ、と述べる間もなく、応戦するために剣の片方を握る。


 これまでにラップローヴが斬った相手の記録を現実に反映するためには、アレッシアや他の誰かを変化させる必要がある。だが、ガヴィンやエルナといった保有者の技能と記憶は概ね、自動的に共有できている。獣人戦士の腕っぷしを借りようとしたところで、奇妙なことが起こった。ブロウの体が(ひと)りでに動き、二人の悪漢を斬り伏せたのだ。


 同時に、遥か異国の熱された、多湿な大気を肌に感じた。現実のものではなく、脳裏によぎっただけだ。


 盗賊団は、ぎょっとして身を竦めた。ブロウの動きが、尋常な剣技とは異なったからだ。最初の二人は、何らの前兆もなく前方に跳躍したブロウが通過する際、すれ違いざまに両断された。そのまま廃屋の壁面を蹴って反転し、地に降り立つ。その際に更に三人が斬られた。


 樹上性動物のごとく、素早い動きで上り下りを繰り返し、その移動自体が攪乱と攻撃を兼ねている。ヴェントの、ある種の隠密の剣技に似ているようだった――密林を根城にする者たちの技に。だが、幻視する地はヴェント王国ではない。


 自分はどうやら、この大陸の南部に位置するヴェントよりもさらに暑く湿潤な地で、何か強大な敵を狩っていた。この剣技はそのためのものだ。もちろん、フォルディアから出たことのない、この自分ではなく、バカンで活動していたガヴィンのような、異なる世界の自分であろう。本を通して、それが紛れ込んだのだ。


 〈黄昏の宝珠〉を、熱帯の狩猟者たる自分も手にしていたのだ。この世界でもそれを手に入れれば、そこを起点として、狩猟者の自分と統合を果たすことができるかも知れない。


 異世界の自分が用いた剣技で盗賊どもを斬り倒し、もう一つ分かったことがある。自分は、飢えている。人族のものではない、もっと強大な何かの血潮に。どうあっても、それを飲まなければならないようだ。

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