第92話 黄昏の宝珠
螺旋階段を降り、地下に降りると衛兵が待ち構えていたが、既に魔女から話が通っているので、彼らはブロウを中に誘った。ごく狭い一室を想像していたが、存外立派な聖堂だった。
兵たちがブロウを残して退出した後、正面にあった祭壇に近づくと、光が迸り、魔物が姿を現した。四つの腕を持つ戦士の石像であり、重々しく声を発する。
「来たか、魔剣の保有者よ。お前に使命を与えよう。〈黄昏の宝珠〉を探すのだ。そのために東へ渡れ。お前の中に眠る血が、目覚めを待っている」
黄昏の宝珠とは、眠る血とは何か、と問いを発すると、
「深き定めを全うするのだ、お前の役割を果たすため、彼の地へ渡れ、狩猟者よ」
一切意味が分からずにブロウは困惑した。何度か尋ねても四腕の石像は、それ以上は答えてくれなかった。もしかすると、こいつを倒せばさらなる情報がもたらされるのではないだろうか。そう思ってラップローヴを手にするが、石像は勝手に崩れ落ち、その欠片も魔石だけを残して消滅した。
とにかく目的のものは手に入った。ブロウは魔女の待つ屋敷へ帰還する。
「意外と早かったな、魔石は手に入ったのか?」
従者からブロウの戦利品を受け取り、魔女は興味深そうにそれを眺める。
「ほう、見たことがない色合いだな。この魔力は、少なくとも魔獣のものではないな。恐らく――いや、まずは報告を聞こうではないか」
ブロウは四腕の石像の見た目と、その啓示の内容を打ち明けた。〈黄昏の宝珠〉とやらは、自分が知らないだけで有名な伝説に現れる名ではないかと思ったが、魔女も「知らぬ」と答えた。
「雲を掴むような話ではないか。その言葉のみを頼みに帝国に渡り、探索を続けるなど。貴君がそうする、というならば止めはせぬがな、迷宮守りの吸血鬼よ。何にせよ、此度の働き、大儀であった」
ブロウは報酬を手にして屋敷を後にする。ラマスーも意味深なことを言っていたが、あの石像が示唆したのは〈黄昏の宝珠〉とやらか。次は誰がどのような予言をもたらすのだろうか。自分の中に眠る血が目覚めを待っていると言われたが、それは吸血鬼であることと関係しているのか。未だに目覚めぬ力が、かの〈宝珠〉により解き放たれるとでも言うのだろうか。




