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DUNGEONERS:LIFEPATH  作者: 澁谷晴
3: Bouleau The Wheeler
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第82話 魔女狩り師ティタニア

 それから下層区で魔物を倒したり、迷宮内から薬の材料を採取したりといった仕事を一週間ほど行った。この場所では帝国のような危険極まりない魔物が出現することはなかったが、モーンガルドのように完全に安全な探索というわけでもなかった。依頼者や〈館主〉からの報酬の他に、魔物から取り出した魔石や迷宮で発見した食料や宝石なども得ることができた。少なくとも食費と宿代に困らない程度の資金は手に入る。ブロウが吸血鬼であり、ラップローヴ保有者ということもあって、魔物に苦戦することはなかった。もちろん〈館主〉の、迷宮守りが簡単に手傷を負うような場所に送り込みはしない、という配慮もあってのことだ。


 下層の各部屋の住民は迷宮守りに対して感謝と尊敬の念を持っていたし、吸血鬼を嫌悪するようなこともなかった。ファルクシア島の変異したエルフ種族と、古代に同地に存在していた野蛮な魔物を〈オーク〉と同名で呼ぶように、血を吸う悪鬼に由来する名〈ヴァンパイア〉で呼びつつ実際にそうすることはないと誰もが信じていたし、ブロウもそんな趣味はないからだ。支給された人造血液をたまに嗜むだけで良かった。


 アルヴィスとはたまに遭遇し、雑談をしたり、一緒に呑んだりする仲ではあったが、迷宮守りとして行動をともにすることはなかった。顔見知りになった他の同業者も、どこか余所余所しく、一線を引いていた。彼らは同じ迷宮守りという役割であっても、共感を抱くことはなかった。そういった感覚は、前の役割を捨てたときに消滅したのかも知れなかった。


 たまに見かける迷宮守りの一人に、ティタニアという初老のエルフがいた。今日ではエルフは百五十年から二百年生きるが、十五歳くらいまでは人間と同じように歳を取り、そこからゆっくりと老いていく。同族のブロウから見れば年齢相応の小母さんといった感じだが、人間が見れば歳に比べて相当に若く思えるだろう。


 ティタニアは元〈魔女狩り師〉だった。フォルディアじゅうに、とっくの昔に形骸化し、慣習的・儀礼的な意味しか残っていない役割が多数存在しており、これもその一つだった。かなり前に魔女(ソルシエール)――現代のこの国では貴族階級の女性を指す語――の中で国への反乱を企てた者が数多く出たため、これを狩るために作られた役割だというが、具体的にどの時代なのかは誰も知らないらしい。今でも国外には追放されたという異端の魔女たちが大勢いて、しかしそれらは何の罪で追放されたのか、本人すら分かっていないのだという。これらの奇怪な事実にある時気づいたティタニアは、杭に縛りつけた藁人形を燃やしたり、重りを付けた木の人形を水没させたりする儀式に意味が見いだせなくなり、これを辞した。


 反逆を企てた魔女の大部分は、恐らく自分たちラップローヴの使用者や、エルナが復讐を果たした標的たちのように、後から迷宮が生み出したものなのだろうとブロウは理解した。今日(こんにち)の魔女階級も、自らが王に背いた場合に裁きを下させるため、という名目で魔女狩り師を召し抱え、逆説的に忠誠を示すという慣習を未だに保有している。ティタニアも結構な高給取りだったはずだが、それよりも導灯の下で迷宮に潜ることに名誉を見出したのだろう。

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