第81話 農室荒らし
問題の害獣は、明るい光がさんさんと降り注ぐ農室――部屋全体が農地となっている所――に出没し、生産者たちを困らせていた。それは一匹だけで行動する、はぐれグリフィンで、完全草食に変異した個体だった。なまじ住民への直接的被害がなく、農作物への被害も限定的なので、衛兵はなかなか動いてはくれないそうだ。ここは辺境なので、迷宮守りが片付けることを当局は望んでいる。
ブロウは村長に対しメダルを見せて迷宮守りと証明し、話を聞いた。農室の天井は遥か見上げるほど高く、太陽を模した魔力灯が輝いている。天井に穴が穿たれており、そこがグリフィンの巣穴になっているようだった。それならアーマイゼに飛んで行ってもらい、退治すれば済む話だ。
アレッシアを彼女に変身させると、この隠密は竜から降り、腕組みをして畦道に立ち尽くす。早く飛んで行って魔物を退治してくれ、と頼むが、そのような卑怯なことはできない、と答える。
「彼奴が現れた後、堂々と名乗りを上げて挑むのでござる。作法もなく、出会うなり戦端を開くなど言語道断」
しかし〈鬼火斬り〉を倒したときは即座に飛んで行って手を下したではないか、と指摘しても、あの時は既に交戦状態だったから、という答え。「竜に乗った隠密」の強みが完全に殺されている。だが、今さら性格が改ざんされたことを悔いても仕方がない。ブロウは畑にアーマイゼと竜を残し、村長宅で待機することにした。
しばらくした後、村中に大音声が響き渡る。はぐれグリフィンが到来し、アーマイゼが堂々たる名乗りを上げているのだ。
「やあやあ我こそは! 大樹公が竜影! 白嵐族のキーゼルとテルミーテの子! 深淵なるクロイツング静寂洞の踏破者にして、忌まわしき魔獣〈欠け角〉の首を狩りし者、我が名は颶風の――」
ブロウはアーマイゼに走り寄り、ベンシックの銃士ファルケンアウゲへと変えた。はぐれグリフィンはせいぜいが投石や弱い魔術による散発的な反撃しか経験していなかったため、慢心していた。あっさりと鉄砲玉に羽を撃ち抜かれ、ブロウが手ずからラップローヴにてとどめを刺した。
アレッシアに戻る前、ファルケンアウゲは、そのグリフィンはあの時代錯誤エルフより余程活躍してくれそうだ、と一言呟いた。




