第67話 討伐隊員募集
近くの安宿で一泊し、起きて最初に視界に入ったのはアレッシアだ。今日もでかいな、という感想だけを持ち、朝食を摂るために迷宮公社に移動した。併設されている食堂で迷宮芋と人造肉のシチューを食べる。どこの迷宮でも取れる材料を用いた、迷宮守りの定番安メニューである。
食堂に入って来て、そこらじゅうで立ったまま赤ドロだけを飲んですぐに立ち去る、まるで希望のない労働者たち。帝国では、デリカシーなどお構いなしに運んできた魔物を解体する迷宮守りがいたものだが、モーンガルドでは魔物討伐に携わるのは少数派だ。空腹や酒のために手が震えてまともに武器も持てない者が多いし、日銭を稼ぐためなら僅かなかすり傷さえ負うリスクも避け、危険がない代わりに何の創造性もない、退屈な単純作業に従事すれば良いだけの話だ。
気まぐれに依頼が貼りだされている掲示板を見ると、大きな紙に「カトリネルエ・レッカーマウル討伐隊員募集」と書いてある。彼女は恨みをよほど買っているらしく、ちょっとした魔物の指定討伐依頼かのような雰囲気だ。職員や近くにいた迷宮守りに聞いてみるが、カトリネルエの名は知っていても、誰も彼女が何をしたのかは知らなかった。
エルナが、自分は父親を殺されてヴェントから出て来たと答えると、向こうは全員騎士なんだろう、とか、銃も魔物も恐れずに戦うのだろう、という典型的な誤解を口にされた。
ヴェント人の全員が騎士というわけではなく、むしろごく一部だ。大半は迷宮内で作物を育てたり資源を持ち帰ったりする、半農民の迷宮守りといったところだ。もちろん魔物や迷宮人の略奪者が現れるので、騎士のみならず農民も聖職者も商人も武装している。
誰でも銃や魔物はもちろん怖いので、慣れるために幼いころから訓練をする。具体的には、癒し手を用意した上で実際に銃で撃ったり、捕獲して弱らせた魔物と戦わせたりするだけだ。これらの訓練で時に死者が出るが、魔物や銃を手にした相手を前に何もできなければどのみち死ぬのだ。不思議なことに、訓練中の事故で身内が息絶えたがために当主の座が回って来た人物が、歴史上数多く存在している。
それを話すと人々は、そんな恐ろしい場所には行きたくないと口を揃えて評した。エルナは、帝国に比べるとヴェントは住みやすく安全だと思ったが、それはさておき、参加するかどうかは別として、カトリネルエ討伐隊と接触しようと考えた。
情報収集のため、アレッシアを斬って南塔卿に変える。幸い彼女に関しては誰も気にしていないので、咎められることはなかった。
「エルネスティーネよ、何用だ? 分かっておろうが、雨天の折には儂を呼ぶでないぞ。一太刀程度なら放てはしようがな」
カトリネルエ・レッカーマウルについて聞かせて欲しい。




