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DUNGEONERS:LIFEPATH  作者: 澁谷晴
2:Ernestine of Eighth Basilica
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第55話 異形の騎士、エドゥアルト

「ゆくぞ――この、オルカのエドゥアルトの剣を見よ!」


 エドゥアルトと名乗ったこの相手は、得体の知れない所があった。何をして来るのか全く読めない。尋常の剣士ではない。エルナは即座にラップローヴを振るい、ヒキガエルに変えてしまおうとした。


 剣は命中したが、それとほぼ同時に相手は肉体の一部を切り離した。果たしてヒキガエルが生まれ、不機嫌そうに鳴く。お返しとばかりに、肉塊の内から一本の魔剣が生えた。ゆらめく銀の魔力を纏った〈天火(ブリッツフーエル)〉、ヴェント騎士の証だ。この相手は、形はどうあれ騎士(リッター)なのだ。


 一撃はエルナを袈裟斬りに裂いた。尋常ならば、肉体的損傷に加え、迷宮生物全般を弱らせる天火の力で戦闘不能だが、ラップローヴによる定義づけがそれを許さない。上段からの振り下ろしで、エドゥアルトを両断しようとしたが、既に彼はそこにはいない。背後だ。


 エルナはラップローヴの使用者だ。いかなるときも、この剣を十全に振るうことが出来る。だが、それはいかなる相手にも勝てるということを意味していない。もちろん、使用者としての外付け(・・・)の膂力に加え、ガヴィンが持っていた剣技や反射神経なども備わっている。それでも、この異形の騎士はエルナを剣士として凌駕していたのだ。


 幾度目かの斬り合いで、エルナは彼に真っ向勝負で勝つことを諦めた。別段、卑怯な手段を忌避しているわけではないのだ。退避し、本を開き、即座に詰め寄ったエドゥアルトが突きを加えるのにも構わず、彼のページに以下の一文を書き加えた。


【エルナに敗れ、自害した】


 最初からこうすれば良かったのだ。これも自分が持つ武器であり利用して勝つことは、まさしく正々堂々ではないか。彼は触手で握った剣にて、どこか分からないが恐らく急所であろう箇所を貫き果てた。


 しかし、どうやらこれはラップローヴ的には復讐者としてよろしくない行為だったらしく、エルナはペナルティを被ることとなった。彼女のページには【満月を見ると死ぬ】という記述が追加された。これを削除すると今度は【月を見ると死ぬ】などと書かれそうなのでやめた。


 エルナはこの記述について重く捉えなかった。どうせすぐに復活するだろうし、満月の日は上を見なければいいだけだ。不死者は己の死について軽く考えるようになっていくものだが、早くもその傾向が見られ始めているのだ。


 今回の結末で分かったことがある。エルナは本に書かれている情報を改竄できるが、それに応じたペナルティを受ける。もちろんその咎めは、ラップローヴの使用や復讐劇に支障をきたさない程度のものだろう。だが、それでもエルナは改竄は最小限にとどめておこうと自戒した。死なら構わないが、そうでない面倒なものなら困る。

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