第48話 露天商
エルナは最初から援軍を呼ぶことにした。探索と魔物の討伐、優れた迷宮守りならわけもないことだ。〈変容する獣〉の内部にいる斥候が必要だ。
それは〈露天商〉と呼ばれる風生まれだった。この小柄な種族は気まぐれで、大半が何かを所有することに執着しない。助詞を省いた早口と、スラングや独自の方言によって話している内容は理解できないことが多い。
〈銀の黎明〉がどのように〈惑わし〉を退治していたかというと、どうやら七人衆が合同で何らかの魔術を用いて追い詰め、どとめを刺していたようだ。それは討伐であると同時に、伝統的な祝祭のようで、複数のプロセスを踏む必要があった。安請け合いした後でこの事実を解読するとは泥縄もいいところだが、エルナは焦っていなかった。いざとなれば無断で任務を中断する――迷宮守りの専門用語でトぶ――ことを選ぶつもりだった。〈露天商〉も、そのアイデアに諸手を上げて賛同した。
本に書かれた【〈惑わし〉のあぶり出しと拘束についての手続き】のページを数行読もうとして、エルナは即座にトぶことを選んだ――役所発行の書類複数と、四つ下の階層の沼にいる蟲の臓物がいくつか必要になるらしい――手間がかかりすぎる、三人目は自力で見つけ出そう。
街をうろつき、上の階層へ向かうための巨大な階段――サイズは、その一段ずつを梯子で昇らなければならないほど――の踊り場にある庭園にやって来た。
新聞売りの屋台があった。黄色く変色した売り物は、現実とは結び付くことのない架空の――あるいは異世界のニュースを知らせるものだ。ドヴェルの店主は近づいて来たエルナをじろじろ見た。
彼女は他者から見れば、奇妙な印象を与えた。かつて巨躯のガヴィンが腰に佩いていた大剣を、エルナは大荷物を抱え込むように背中に背負っている――それでも、彼女はこの剣の持ち主として定義されているので、重さなどないように移動できる。
藪の中から、緑色の粘液で全身を浸した奇怪な鳥が、音もたてずに飛び立った。そいつが、蜂蜜を付け過ぎたパンを無造作に食べるときのように、液を滴らせるのを見ながら、エルナはふと、復讐相手は九人で本当に合っているのかという疑いを抱いた。本の記述は必ずしも合っているわけではなく、ガヴィンがそうだったように、異世界の現実が混ざることがある。六人とか四人になるのなら良いが、十八人とか九十人になったらどうしようかと思う。この復讐劇については、トぶわけにはいかないのだ。
しかし、この懸念についてはすぐに消え去った。復讐のための探索の合間に、一旦休憩することはあり得る。それが少々長くなり過ぎるということもあるはずだ。いざとなれば本のほうが、相手をこちらに寄越してくれる。第一、他にすることもないし、のんびりといけば良いだけの話だ。
そう思っていると〈露天商〉が新聞屋の屋台を見て、自分も商売をしたい、と言い出した。なにしろ彼は〈露天商〉なので、それは自然なことだ。




